投稿日: Jan 15, 2015 12:54:9 AM
本やレコードといったパッケージ型コンテンツのビジネスは、食品と同じ様に1人当たりの購入量に限界があり、いくらあの手この手を使ってもすぐに市場は飽和してしまう。その中でビジネスを伸ばすにはパッケージ以外の分野に進出するか、ビジネスを伸ばさなくても固定ファンをしっかりおさえるかしかない。
本とレコードの比較は厳密には意味がないが、似た点は多いものである。書籍もCDも平均すると国内では一人年間数件しか買わないだろう。また家庭内とか自分の部屋の中に置ける容積に限界があって、音楽が好きとか本が好きであっても大方の人は何百という単位になるくらいである。これは年齢差があって、若い人は100-200で、中高年なら500-600とかだろう。それを超えた部分は捨てられるか中古市場に行く。
こういう分野をデジタルやネットにしたところで、すぐに飽和してしまう。音楽ダウンロードの行き詰まりがあるように、電子書籍も天井知らずに伸びるとは考えられない。それよりも音楽は効き放題のサービスに転化していったように、電子書籍は電子図書館のようなサービスに向いていると思える。
電子図書館のアプリはありそうで、まだない分野である。Amazonにおけるカスタマーレビューのような勝手な評ではなく、本のちゃんとした書評や参照関係などは、まだオープンな仕組みができあがっていないので、期待した本を読んだものの消化不良に陥った際に、アドバイスを受けることができない。
掲示板の時代から文芸でも音楽でも特定のテーマを語り合う場所はあったが、それらを見つけてくれるのは検索サービスであって、決して個々の掲示板が連携する仕組みにはならなかった。電子図書館の場合は書誌情報の連携が可能になるので、そういった発展の延長上に批評などもできるようになるとよい。それは音楽も美術も共通な仕掛けになると思われる。
レコードの話に戻って、結局は固定ファンを抑えたビジネスが長続きするものになると思うが、個人で何百のコンテンツを持つようになると、特定の大好きな分野というのができて、そこに関してはマニア化していくことになるだろう。例えば特定のアーチスト達とか分野を中心にコアなレコードやCDを買い始めるようになる。
そういった何々愛好会とかファンクラブがミニコミ誌を出していたりするところが、まだ日本のネットでは充実していない。それはYouTubeでも日本では商業音楽がシャットアウトされてしまうように、容易に歌詞を掲載することもできず、活動に不自由が多いからである。
私はアメリカ黒人音楽の中のブルースを中心としたものを聴いたり集めたりしているが、それ関係のネットメディアは日本には殆どないと言っていいほどで、英語サイトを見ることになる。おそらくコアな分野になればどこでも英語サイトを参照しているのだろうと思う。
こういったサイトの経験が前述の電子図書館につながる外縁のコンテンツになると思われるので、日本で新しいタイプのコンテンツビジネスが立ち上がり難い要因になってしまうのではないかと危惧する。
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