投稿日: Sep 11, 2010 12:16:44 AM
社会の活性化に規制は邪魔していると思う方へ
9月9日に厚労省村木厚子元局長に無罪判決が下りた。大阪地検の大チョンボであるが、そもそもどういう事件であったのかについては、今更紹介はされていない。村木氏が障害保健福祉部企画課長に指示して「凜(りん)の会」を障害者団体と認める証明書を上村被告に偽造させたという、虚偽有印公文書作成・同行使の罪に問われたが、「村木元局長の指示があったとするのは不自然。犯行動機も認められない」判決だった。これに関連した「凜の会」関係者の公判でもほとんど証拠がなく曖昧な供述が翻るなどが続いていたので、無罪になるだろうという見通しがあったが、ではなぜ検察が証拠もないのに強気の立件をしたのかが疑問である。
「凜(りん)の会」については障害者向け郵便制度利用のためにNPO法人「障害者団体定期刊行物協会」に加盟申請を再三したが、通常の障害者団体にしては異常に大量DM、広告掲載量が多い、福祉団体としての活動の実態が不明確などの理由で3度にわたり加盟を拒否されたという。障害者向けという名目のDMの発送が埼玉県内の郵便窓口で拒否された後に、日本郵便の新大阪支店と新東京支店で受理されている。これらの支店長や総務主任も、制度の適用要件を満たしていないことを承知のうえで大量の違法DMの発送を許可したとして、郵便事業法違反容疑で逮捕された。
おそらく検察は周囲から全然評価されていない「凜の会」が、なぜ日本郵便の新大阪支店と新東京支店で受け入れられたのかというところに疑問を持ち、政治家の関与があり得ると判断したのだろう。政治家との接点として想定されたのが障害保健福祉部の出した偽証明書であり、現場の責任者としての村木氏に全くのとばっちりが行ってしまったと考えられる。しかし根本の問題は日本郵便の営業所ごとにDMの判断が異なり、交渉しだいでは、A局でダメがでてもB局ではパスしてしまうことである。この問題は障害者向けに限らず、あらゆる郵便物で過去からずっとひきずっている。このやりかたの曖昧さが今回の検察の疑惑を呼んだと思う。
つまり郵便法は存在しても、実際は現場で判断することが多すぎるから曖昧になる。元を辿れば法律による規制の多さがいつも何らかの違反を生んできたともいえる。たとえば新種のDMの開発した際に、その郵便料金をいくらと考えるのかというのは、利用者と郵便局の知恵比べというかネゴシエーションになり、郵便局側も手間もかからず売り上げが増えるならよいと判断するところと、理屈をこねまわすところとに分かれる。「凜の会」のDMが新大阪支店と新東京支店で受理された理由は、両支店が売上げを増やしたかったからであろう。拒否した埼玉県内の郵便窓口は「凜の会」か内容物に不審をもったからだろう。
封書なら80円かかるものを折りたたんで50円で送れるために今盛んに使われる圧着ハガキも、郵便法の解釈の中から合法となる方法が決まってくる。これはハガキに宛名シールを貼っても良いようになったことから、宛名シールをほぼ紙面全面にして、また裏も全面シールを貼ったものという解釈で成立している。郵便法では宛名シールのサイズ制限がないからできるのだが、だからといって郵便法を野球のルールブックのようにするのは得策ではない。そのルールの中の抜け道を知っている人だけがビジネスをうまくできるようになるからだ。これは特定の人の利権や関係者の癒着を生んで、ビジネスをどんどん不透明にしていく。こういった制度や法律はどこかに被害が出ない程度にシンプルにすべきである。それが新たなビジネス開発も生む土壌となる。村木氏には可哀想だが、役人天下の日本故に別の役人がとばっちりを受けてしまったともいえる。