投稿日: Apr 03, 2013 1:17:49 AM
ライフスタイル提案は可能なのかと思う方へ
日本の家電メーカーには重電から家電まで手がける日立・東芝・三菱のようなところと、戦後の電化に乗って大きく発展した家電専業とがあり、今日では後者の凋落が社会問題のようになっている。確かに日本の工業製品輸出の牽引役を家電専業メーカーは担ってきたが、その内実はアメリカが先行して発売していた家電品の追いつけ追い越せであったことを考えると、それが今度は韓国・中国に移ったわけで、同じような家電製品を製造している以上は日本の勝ち目はないといえる。
日本の家電が成長した背景には、戦前から重電で培ったモーターなどの技術移転と、戦後は日本で半導体開発が遅れなく出来たことが大きな要因だろう。こういう技術によって日本の家電は丈夫で長持ちすると言う面と、メカトロニクスで使いやすいものにすることが出来た。しかしこの20年ほどで韓国や中国でもモーターやエンジンの製造能力はできたわけだし、半導体にいたっては韓国も台湾も日本以上の製造能力をもつようになった。しかし何を作るべきかという点では、かつてはアメリカの中流家庭のライフスタイルを睨んで、そこにあるものを改善しようとしていたわけだが、その市場がアジア勢に侵食されると、開発目標が日本国内向けのガラパゴスな製品作りに走りすぎたために、世界的に打って出れない新製品が多くなってしまった。
ガラパゴス化はそれなりの理由がある。
例えばテレビはかつては日本では大型が売れずにアメリア向けは大型であった時代があったが、1990年代くらいから次第に日本でも大型テレビが売れるようになった。これは日本のライフスタイルが次第にアメリカに近づいていくから、先行してアメリカ向けをやっておけば、そのうち日本でも売上が伸びるときが来るという考えで、オーディオなどもそのような面があった。そうこうしているうちにアメリカで必要なものは日本で何でもできてしまうようになった。
アジア勢はアメリカは後回しにして発展途上国向けに安い製品で輸出を拡大し、それを足場に高く売れるアメリカ向けにそれなりの品質のものを提供するようになった。しかし日本は安く大量にモノ作りする競争に今更入れない。
だからもうアメリカのライフスタイルに乗っかってビジネスするわけにはいかなくなったので、過去のような家電の復活はないだろう。
おそらく家電開発の変化は、アメリカのライフスタイルから脱して、新しいライフスタイル提案的なものに切り替えようとした結果が、ガラパゴスだったのだろう。実際に新ライフスタイルを提案できたのはAppleくらいで、日本の家電開発は改善改良はできてもライフスタイルを考えるようなことは所詮無理なのではないか。ライフスタイルは多様化していくので、従来のモノ作りのマーケティングとは異なる考え方が必要だからAppleしか成功しなかったのではないか。
つまり、ありもしないライフスタイルを想定して大量生産品を製造販売することは不可能なので、家電といっても製造業に徹して規模の小さい受注生産に近いものにならざるをえないのではないかと思う。自動車は業務用にものすごく多くの車種があるが、シャーシとか基本部分は共通で、業界ごとにカスタマイズするような、多品種少量生産をしている。そういったビジネスをするには日本の家電専業メーカーは企業として大きくなりすぎたのかもしれない。