投稿日: Jul 11, 2011 10:21:56 PM
iTuneなどが音楽を支配するのかと思う方へ
情報を受け取る側からすると、アナログとデジタルのどちらがよいのかなどとは考えないであろう。つまり生活者の手元に届けばどちらでも大差ないと思うが、アナログとデジタルのどちらの方が、より生活者に届きやすいかということが問題だろう。音楽がダウンロードできるようになったことのように、デジタルとネットで情報の広まり方が促進されるところが、デジタルメディアの活躍するところとなるだろう。音楽ダウンロードが一般化したとは言っても、ナマの実演から世界的な流通に至るまでの音楽活動のいろいろな局面がすべてデジタル化されたわけではなく、まだこれから変化が起こるところもあるはずである。
●ライブ
ライブの予定情報などはネットでいくらでも拡散できるが、実際に出かけていくとなると制約が多い。今ならUstやニコ動によるライブ中継が可能になった。アマチュアが他人の曲をカバーする場合に営利目的でなければ構わないが、ネット中継は別扱いになる。しかしUstやニコ動自身がJASRACからの使用許諾を得ているので、そのような配信を使うならOKである。Ustやニコ動以外でもイベント主催者が包括的に権利処理をしてくれれば、実演家は気にする必要はないだろう。 つまりフリーの世界ではデジタルの配信が広まると考えられ、昔のイカ天のようなネット番組も現れるかもしれない。
●配布パッケージ
ライブ中継はネット上に保存できるものの、そこから探して出してもらうことは難しい。何らかのリンクを辿って来てもらうようにしなければならない。実演者が自分でBlogを持っているとか、ネットで紹介される場合には過去の作品にリンクできるが、レコードやCDのパッケージメディアのように作品が独自に勝手に流れていくようにはなっていない。アメリカでは日本で例えると商店街に活版印刷屋があって名刺や挨拶状を刷っていたような規模で、デモレコードを作ったりシングル盤のプレスをするところがあったりした。このような実演家の身近で簡単に権利処理ができて、YouTubeのようなタグ・メタデータをつけて発見してもらいやすくし、自己紹介の動画も連動するような、MySpaceの上を行くようなプラットホームが出てくるだろう。
●地域流通
アメリカでシングル盤を作ったならば、地元のレコード屋やラジオ局のDJやジュークボックス業者にサンプルを送って自分でプロモーションをするか、レコードのプロモーション専門業者に任せた。これでローカルに1000部とか売れて元がとれるくらいになる。ちゃんとレコードを録音するとなると、スタジオを借りてミュージシャンやエンジニアに支払うので何千部売れる実演家でないとローカルなレコードも作りにくかったのだろう。今はデジタルでシンセからボーカロイドまで低額で自作する環境ができているので、参入の敷居は低くなっていて、埋もれた才能がまず地域コミュニティで開花しやすくなっているはずだ。地域文化活動の一環として登竜門ができるとよい。
●全国流通
アメリカの場合、インディーズのレコードがローカルヒットすると、他の地域のディーラーやレコード会社が目をつけてくれて、原盤を買い取ったりリースされて、より広い地域や全国配給のレコード会社が再発売をすることになる。日本人が知っているアメリカのレコード会社とは全国配給をしているところで、その下には桁違いの数のローカルインディーズがあるのである。この両者の共存共栄の関係が重要だが、ネットではローカルも全国も区別がないので、よい関係が築きにくいのかもしれない。すべてがiTuneStoreに平等にあるよりも、ネットでも情報のヒエラルヒーが見える状態の方がよいような気がする。まずは分野別のマニアサイトとかソーシャルメディアのようなものが考えられるだろう。
●インタナショナル流通
これはもうiTuneStoreなどで実現されている面と、YouTubeで実現されている面とがある。両者は、YouTubeで発見してダウンロード販売につながるという関係だが、YouTube以外にも例えば習い事というジャンルで発見してもらうきっかけとなる音楽ソーシャルメディアが出てくるだろう。
このように見てくると、まだ音楽という馴染み深い分野でも、手のついていないデジタルメディアというのは多いと思う。それはeBookにも同様に当てはまってくることだと思う。
関連セミナー eBookに相応しい、アイデア、企画、コンテンツ、ビジネス 2011年7月22日(金)