投稿日: Apr 19, 2011 12:4:42 AM
出版に出口はないと思う方へ
出版業が長期にわたって下降していく中で、弱いところはほんとうに切羽詰ってきている。あまりにも弱体化した会社は売却する価値も無いので、併合していくしか選択肢は無いように思うが、日本人はなかなかそうはしない。だいたいすでに過去の蓄積を食い潰しつつある持ち出し状態の赤字会社同士が一緒になるのは難しい。みんな自分の会社だから赤でも出版を続けているのであって、他人の赤字まで面倒見る余裕はない。つまり赤字が出ない状態に経営を切り替えないと併合も難しいだろう。その先にはコンテンツを活かした今日的なビジネス展開が有り得る。
消費者向けの雑誌媒体は広告主が居る限り、広告収入に応じて発行できるが、どの雑誌も広告量は大変少なくなっている。特に日本の製造業が広告主のものは打撃が大きいだろうが、広告モデルで雑誌を出し続けたいなら、今までのスタイルではなく、広告主とともに新たな媒体を創造するくらいのつもりで、クロスメディア的なことでもしないと相手にしてもらえないかもしれない。紙の雑誌はOneOfThemであって、そのコンテンツをメディアを問わずに活用する気にならなければならないが、出版経営者が自分でそのようなことをするのは苦手ならば、どこか企画できるところと組んで、自分はコンテンツの提供とか加工という立場になるべきだろう。
BtoBの業界誌紙はターゲットが見えているものの、国内は縮小傾向なので紙の雑誌では限界がくる。すでに広告や印刷物制作、調査、議事録編集などのアルバイトも行っているところが多い。編集プロダクション化しているともいえる。日本が右肩上がりの時は派生的に行ったイベントなども大きな事業になったが、今はイベントは専業のところが行っていることが多い。しかしこれは取り返すように努力すべきである。業界誌紙はどうしても広告主の方ばかりを見てしまうので、イベント会社に負けたのである。イベント会社はバイヤー視点で企画しているので、業界誌紙も利用者側に軸足を移さないと新たな発想は行い難いだろう。
学会誌はもともと採算が取れなくてもボランティアで出しているようなところがある。業界誌紙は製造業で言えばサプライチェーンのようにステークホルダを広くカバーしているのに対して、学会誌は自分たちだけの世界を作っているので狭くなってしまう。同じような名前の学会がたくさんあることが示しているのは、どんどん自分たちの世界を細分化し続けてきたことだろう。これではわざわざ採算が合わない方向に活動してきたことになる。狭く区分して論文審査などをするところは思い切ってデジタル化してしまい、それらを基に似た学会が連合して広報的な活動ができるようになるといいのだが。
記事『デジタルコンテンツで300%ビジネス』では、コンテンツをデジタル化して管理するとどのような展開の可能性があるかを書いたが、それらに取り組むと同時に上記のようなビジネスのスタンスを変えることも行わないと、自立した経営にはならないだろう。