投稿日: Jun 13, 2015 1:15:34 AM
広告が既存メディアからネットにシフトするにしたがって、ネット上の広告代理店が活躍する領域が増えるのだが、そこで何らか新たなビジネスモデルが生まれるようなイノベーションが見られるのかと思ったのだが、意外に広告がメディアを変えるようなことは起こっていない。
しかし、ネットのもたらす可能性としては、紙の雑誌が広告モデルで隆盛を極めたように、ネットなりの金のまわる仕組みの上に、新たなネットメディアを産み出すことになろう。
今日雑誌の発行が大変なのは広告集めが代理店に任せられなくなって、雑誌発行者の自分たちの労力を削がれるからで、これを各雑誌媒体ごとにやっているわけだから、雑誌の活動は低調になっていく。だからいっそのこと広告だけのフリーペーパーに鞍替えすることが起こった。リクルートの情報誌がそうであり、またR25というのも一時話題になった。しかしこの手も行き詰まってきたと思う。
フリーペーパー全盛の時代に、各ローカル広告営業は発行者が自分たちで行なうだけでは紙面を埋めきれなくて、下版前の土壇場のアキスペースに全国的なクライアントの広告を嵌め込められるようにしたエージェントがあった。あらかじめクライアントの希望するテーマに相応しいフリーペーパーを対象にするのだが、全国に多数あるフリーペーパーにランダムに広告を配置していく。読者の側からすると、毎号少しづつ広告が変わっていくように見える。
クライアントの側は定額でいろんな媒体に顔出しすることになる。どこに出るかはお任せになるわけだが、マッチングとかの管理はされている。つまり編集と広告の分離モデルもあり得るのである。
これは今ネット上の広告スペースに、視聴者の属性に合わせて広告を出していくのと少し似ている。ネットの方が利用者の購買履歴とかいろんな属性を駆使するので、広告と媒体のマッチングがうまくとれるはずである。だが今日ではECやSNS広告が主で、この広告を元にターゲットを絞ったネット上のメディアを作り出すところまではいっていない。
かつてはMySpaceみたいにSNSが特定分野に嗜好をもった人のメディアになるかと思われた時もあったのだが、そうでもない。Blogメディアというのが注目された時もあったが、個々のBlogが勝手にやっているだけで、それらの集合体にメディアとしての何らかの役目がでてきたわけでもない。
既存の出版社がカンニバリズムを避けているのかもしれないが、紙の雑誌のように嗜好をはっきりさせた編集主体のメディアがネット上に生まれていないのが不思議である。もう雑誌編集者に広告まで任せられないならば、数多くの嗜好別のメディアに対してマッチングした広告を提供するようなプラットフォームを編集とは別に作って、クライアントと媒体の間でビジネスを成り立たせる方法しか残っていないのではないかと思う。
Top → Articles デジタルメディアビジネスの記事 過去記事→Archive