投稿日: Jun 08, 2012 1:22:22 AM
クリエータとメディアの間の問題が未整理だと思う方へ
専門外の話ではあるが、著作権というのは出版権とごちゃごちゃになっていて、本当に著作権者のためになっているのかどうか疑問の時がある。そもそも著者と出版社とは完全に利害が一致しないもので、その両者の関係はそれぞれの権利として明確にしいく必要がある。どちらかが一方的に物事をすすめるのではなく、双方からのせめぎあいで次第に最適化していって、両者が積極的に動けることがパブリッシングのエコシステムのためには必要だが、どうもそういうビジネスパートナー的な関係構築を意識している人は少ないかもしれない。
著者でもベストセラー作家から新人から企業人などいろいろな立場があって考えていることが異なる。ベストセラー作家は出版社を選んだり印税などの交渉する権限を発揮できるが、多くの著者は出版してもらえることが第一優先で、印税云々などの諸条件に強い主張はできないだろう。これはお金を払う立場ともらう立場のことで、お金をもらう方が条件を飲まざるをえなくなることが多い。本が運よく売れて再版される時はまた交渉の機会があるのだろうが、そこで著者はどのように振舞ったらいいのかということは私はわかっていない。また企業人の著者の場合は仕事として執筆することもあるし、半分仕事で半分アルバイトだったり、仕事で得た知識でサイドビジネスをしている場合もある。こういったことも本当はどうすべきか私にはわかっていない。
従来は必ずしもプロではない著者はどこにも相談する相手がいなくて、出版社にお任せにしてきた。それでよかったかどうかはよくわからないのである。これは出版社がやり過ぎているということではなく、交渉がそもそもできない状態であるということで、これはカメラマンやクリエータに何かを頼んだ際に、再利用のことなどいろんな条件を書いた紙を渡されることがあるが、これもテンプレート化されたものが出回っているようで、実際に個々に検討したり交渉したことはない。つまり権利交渉は双方と曖昧だったことが、電子出版やeBookのような新しいことをする際に全部解決を迫られるようになった。
これは何もややこしいルールを作らなければならないということではなく、おそらくこれからは自由に使えるコンテンツを増やすことで交渉の負荷を減らせてパブリッシュできるようになるはずだ。クリエイティブコモンズのccのようなコンテンツ利用を促進させる仕組みは、作家・クリエータからするとccはメインのビジネスにはならないように思えるが、それでも例えば使い残してるコンテンツを名刺代わりに世に出すような目的では使われる。ccでの公開に合わせて商用の場合の条件を出していけば、コンテンツの自由市場は開けてくるであろう。
日本ではパブリッシングをオープンにして活性化するためには、クリエータとメディアの間にフェアな関係を作っていくことも平行して行わなければならないだろう。
Ebook2.0 Forumと共同開催
2012年6月20日(水)『出版ビジネスをサービス指向で再構築する』
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