投稿日: Aug 22, 2014 1:35:56 AM
シンクライアントとかクラサバとかの言葉は死語かもしれないが、コンピュータをパーソナル利用する以外の組織的な利用においては永遠の課題であって、TTSの時代から何度も言葉を変えながらいつも未解決なボトルネックを抱えていた。
それは組織的な利用で効率を上げるためには、多面的な検討が必要で、CPUが速くなったからとか、通信速度が改善されたとか、技術的な個々の進歩だけでどうにかなる問題ではないことをあらわしている。いつもこういう部分的な改善が社会全体のインべーションに直結するかのような短絡的なニュースに振り回されてきた。
最近iPadなどのタブレットの伸びがイマイチ傾向にあると指摘されるが、それも上記の多面的な要素の最小律が足をひっぱっているからだと思える。つまりコンテンツの準備、サーバとかデータセンタ、通信環境、働く環境やワークフロー、管理システムなどを、たかだか何万円かの端末の導入のために準備するというのは本末転倒で、やりきれなかったということだと思う。
つまり全く過去実績がない白紙の新規事業とか、軍など特別な予算が与えられるところ以外は、シンクライアントのトップダウンの導入はできない。既存のITシステムを運用している組織である企業や学校では、ボトムアップでシンクライアントに必要な環境を10-20年かけて築いてきたところでしか、タブレットやスマホを基幹システムと関連付けて使うとか、モバイルのECはきわめてやり難い。
だからこういったイノベーションの時期は新規事業者にとって大きなチャンスとなるのである。
でも何しろタブレットやChromeBookのような安くて便利そうなでデバイスが目の前にあるのだから、使わなくては損なような気になる。しかし気合を入れて立派なシステムを作ろうとすると、挫折するのは目に見えているので、ストレスのない利用から始めるのが一番である。
ある学校で授業にタブレットを配って使い始めようとしたところ、生徒が教材をネットからダウンロードし始める段階で頓挫してしまった話があった。学校の場合は授業時間中に何百人~千人規模の同時アクセスがあり得るので、それに耐える無線LAN環境を作ることの方がデバイス選択よりも大問題なのである。だから最初からSDカードに教材を入れておいて使えるような手順にするしかない。
こんなことが起こるのは教育の当事者たちにデジタルのリテラシーが欠けていて、またシステムを提案する側も現場を知らずに作った机上プランをそのまま受け入れてしまったからであろう。今日ではシンクライアントの多面的な要素をすべてストレスのないやり方でシステム設計をすることもできる。コンテンツはPDFをちょっと再加工した程度にして、オンラインで使うのはログインと簡単なアンケート程度にして、補助教材はネット上にあるものを外部リンクにして…となるわけだが、すぐできるやり方には事前に関係者から何かと不満もでしまうのが辛いところだ。
頭でっかちなことはあまり言わずに、まずはやってみてから改善しようよ。
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