投稿日: Mar 04, 2016 12:50:23 AM
現在経済的にはパッとしないでくすぶっている分野だがイノベーションが期待できるところがいくつもある。しかしそれが実を結ぶにはおそらく20-30年はかかるだろう。農業も金融もエネルギーもイノベーションの夢を広げてくれるところは多くある。特にエネルギーはエレクトロニクスとかITに直結できるので、イノベーションは先行しているのだが、意外に日本では伸びていない。例のシャープだってソーラーパネルでは世界のトップを走っていたことがあるし、有機化学系の会社も安価なパネルを開発する力をもっているが、政府の国策がなかなか原発から代替エネルギーに切り替わらないので、世界に羽ばたくことが出来ない。
代替エネルギーはいろいろあれど集中的に大電力を起こすものではなく、どちらかというと分散的に小電力を発生させるので、それを遠路の送電をするのではなく地産地消的に使う小さな経済にしないと根付かないだろう。今ホームセンターなどでも庭用にソーラーセルと夜行灯を合体させたものを売っているが、家の単位での発電と消費、マンション単位での発電と消費、学校・企業での発電と消費、地域での発電と消費、というようにボトムアップ的な代替化の取り組みが必要であると思う。
今まではこういう小さな発電と消費をするとかえってコスト高になって普及しなかったのだが、あと少しでペイするところに近づいている。記事『エジソンの失敗(2)』では、広く自動車に使われている12V直流を家電やモバイルでも使える様にすれば、ソーラーパネル、風車、水車、メタンガス火力などなど身近な発電で12Vのバッテリーに電気を溜めるスマートグリッドが安くできるであろうことを書いた。また記事『電池は現代の錬金術』では、家電で交流100Vが必要なものは洗濯機やクーラーなどの大きな動力や熱源だけで、あとは自動車用の電気器具のように12Vのバッテリーで置き換えが可能になりつつあるが、そういう大きなトレンドに日本の家電業界はなかなかついていけていないことを書いた。
こういうことが可能なのは、今のモバイル機器はリチウム電池の3.2-4.2V直流を、内部で冒頭の写真(黄矢印)にある2-3mmのICによって、CPUやメモリなら1V強に、オーディオなら数Vに、など必要に応じて電圧変換をしていて、その効率も9割ほどになっていて、交流をトランスで変換するのとあまり変わらないところまできているからだ。この1-2A程度の変換技術は大抵のエレクトロニクス製品に使われていて、HDDの基盤をみても2種類の異なる電圧を内部で作り出している。だから前述の熱源以外は部屋のコンセントに12V直流の供給口があれば対応できるし、その奥に家ごとに車のバッテリーのような蓄電池を置けば、さまざまな小電力発電エネルギーをそこに集中させることもできる。ローカル発電の足りない分だけ交流の電灯線から供給すればよい。
照明のLED化も12Vがあると好都合であるので、家庭とかマンションなどからのボトムアップ的直流12V化でも電力使用量は2-3割とかは減らせるだろうと思う。原発を何分の1かにすることは、省電力化とともにあるはずだ。
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