投稿日: Oct 08, 2013 12:12:27 AM
イノベーションは起こるのか?
まつもとあつし氏が野副正行代表取締役社長にインタビューした記事「出版デジタル機構の現状と次なる構想…」を読んだけれども、結局最後ははぐらかされているような印象を受けた。インタビューの後半はビットウェイ買収の話が主になるのだが、今まで緊デジ問題など制作面の仕事が主であったのが流通を行うことを以前から狙っていたことになっている。これは出資者が大手出版社や大手印刷会社であって、取次ぎが入っていないことからもうなずけることだ。とすると書店の顔色を伺わなくても良い領域を出版業界に作り出そうとしているともとれる。
インタビューでは出版デジタル機構が民間会社であることを強調している。当初は産業革新機構のバックアップが表面に出ていてインフラ整備がミッションのようにしていたのが、電子書籍流通で利益を上げる会社というのが本音となる組織なのですと告白している記事でもない。ここらへんがはぐらかされているなと思う点である。
これから取り組むこととして、技術顧問の国立情報学研究所の高野明彦氏の協力のもとに、コンテンツデータと書誌データをリンクさせ、一元管理するアーカイビングセンターの構築とおっしゃっているようだが、このほかシステム化をすることが役割であるように受け取れる。これはAmazonとぶつからないような流通を画策しているのか、Amazonを甘く見ているのかのどちらかだろう。
確かに本を買う側からするとAmazonよりも便利なものを作ってくれれば有り難いのだが、そういう基本設計があって構築しようとしているのか、やっているうちにAmazonより良くなるだろうということなのかは分からない。少なくとも対Amazon戦略ですばらしい構想が漏れて伝わったことは今まで無いので、かなり困難な道に思える。
日本で進んでいるのはBookOffやTutayaなど店舗を持つビジネスでのノウハウであって、通販会社以外のECは決して革新的ではない。Yahooがオークションの敷居を低くしようとしているが、利用者から見て欲しいものを探すためのサービスは10年前のeBayにも劣る水準で、いくら出品物を増やしても流通が促進されないのではないかと思う。通販会社は以前からビッグデータ処理的な統計に基づいた販促をしているが、Yahoo・楽天はそいういった面に投資をしてこなかった。
だから出版デジタル機構は楽天booksには勝てる可能性はあるが、自社でデータセンターをブンブン回しているアメリカの会社を甘く見ると大変な損失になるリスクはあると思う。