投稿日: Nov 21, 2011 12:12:14 AM
AKBと嵐では韓流に負けると思う方へ
未だに日本ではロングテールは商売にならないという見方が多い。それは旬をすぎたものや、売りそこねたものがロングテールであるという認識からだろう。確かに電子書籍10万点揃っていますというネットのストアを見ると、売れ筋の本を電子書籍でもついでに売るというもの以外は、ああ過去にそんなものもあったなあ、という図書館で借りるかブックオフで100円のような本のタイトルが主体だからだ。商品ではないが青空文庫で著作権切れの文芸なども、いろいろなデバイスで読めるようになっている。しかしロングテールとはそういうものだろうか?
もう一つの典型的なロングテールはコミケのような何百部の冊子やCDを自作しているアマチュアコンテンツの世界である。学生サークルから始まっても中には東方系のような商業メディアに乗って広く知れ渡ったものもあるが、殆どは経済化しない。これらは紙媒体の時代には現物に接する機会がなかなか無かったのだが、ニコ動・YouTubeのような投稿型の露出が可能になって、着目されるコンテンツは次第に増えている。さらにソーシャルメディアの普及によって短期間に情報伝播するようになって、若者相手に限ればマスメディアによるプロモーションに負けない場合もある。
今はマス向けコンテンツがソーシャルメディアでクチコミをしようと躍起になっているが、本来ならばクリエータがマスメディアに取り上げてもらう以前にソーシャルメディアでクチコミ的に広がって、大量の商品流通だけをマスに依存するというのが筋であって、これはマスのビジネスをする人にとっても一部クチコミで評価が得られていれば開発のリスクを減らすことにつながり、万々歳のはずだ。つまりマスとロングテールは今後よい関係が築かれていくはずで、ロングテールを登竜門としてマスデビューをするというのは、高校野球の県代表戦や大学野球・社会人野球などアマチュアを観戦する世界と、ドラフト会議からプロデビュー・公式戦というプロ野球ファンの世界が両立するようなものである。
以前ローカル市場と全国市場の関係について、アメリカの大衆音楽を例に、昔からロングテールをベースにしたコンテンツのピラミッドのことを書いたことがあるが、ソーシャルメディアによるクチコミの発達はどんなコンテンツもそのような構造になることを暗示している。しかしアマチュア・ロングテールは儲からないと思われていては、彼らのための権利処理とか少額をまわすロングテールに向いたビジネスのプラットホームを作るところがなかなか出てこない。プロの世界が1曲100円ならば、アマチュア用には10曲100円のような仕組みが必要だろう。
アメリカの大衆音楽のプロモーションは、pushはラジオ、pullは25セントのジュークボックスであった。ロングテールコンテンツのpushはクチコミとして広まりつつあるが、今欠けているpullも必要になる。