投稿日: Nov 05, 2012 1:44:58 PM
日本の電子出版はこれからだと思う方へ
自由電子出版の長谷川秀記氏の意見は、記事『電子出版に展望が持てるか?』で紹介したが、日本の出版が儲かるかどうかとは別に、出版の動機が希薄になっていることを感じた。電子書籍でこのようなことが可能になるとか、クラウドでこんなサービスができるという機能をいくら知っても、出版の動機が強くなければ、まとまりのある媒体を考え出すことは難しいだろう。その基本は個々の出版のマーケティングになるはずである。宗教団体など最初から出版目的がはっきりしている場合は、媒体が紙でも電子でも利用者が接しやすいものを用意するのが出版活動になる。それと同様に、最初に技術やメディアありきで考えるのではなく、読者・利用者側から再設計・再構築をすることが日本の出版に求められているだろう。
電子出版再構築研究会の第1期はマーケティングをテーマに行い、「出版ビジネスに何が求められているか(こえほん)」 「出版マーケティングをみなおす(復刊ドットコム)」 「新しい出版マーケティングの時代(日販)」において話し合われた内容は今までの日本の出版社にはなかったような試みがいろいろあったので、それらのポイントを11月27日の研究会で総括して、中期的なマーケティング課題の整理を行う予定である。
アメリカでの電子書籍のブームがそのまま日本に当てはまらないにしても、どちららかというと変化を好まないヨーロッパにおいても電子書籍は着実にすすんでいるので、日本のことを客観的に考えると両者の中間のような道を進むことが考えられる。過去の傾向として日本の出版の特殊事情に囚われ過ぎた見方をして、出版ビジネスの制約や閉塞感ばかりを気にするのではなく、むしろ従来のマーケティングも足りない点は多くあったことも、デジタル化ネット化によっていろんな制約も崩れることも、今後の可能性の大きさであるとも考えられる。
しかしその可能性は棚ボタ的にどの出版社にも生じるものではなく、新しいデジタル・ネットの環境におけるメディアそのものも、また企画制作プロセスなどを考え直すことから見出されるだろう。現在はドットブックやXMDFからの変換によって品揃えを増やしているEPUBではあるが、必ずその次の段階に進むであろう。11月27日の研究会では、日本の電子出版の草分け的存在で、自由国民社やJEPAでさまざまな活動をされてきた長谷川秀記氏のプレゼンを受けて、から、次段階の出版のあり方と可能性を考えてみたい。
Mediverse+EBook2.0Forum 11月の研究会