投稿日: Jun 21, 2011 10:29:50 PM
デジタルリテラシを追い風にしたい方へ
パソコンやDTPの登場で、学校や社内で掲示・配布するものや、店頭などの現場で使うPOPの内製化が一般的になった。これは必要時点で必要数だけ自分で印刷するものなので、オンデマンド印刷の裾野需要であるともいえる。もっともヨドバシカメラあたりになると大量に制作しているので、もう裾野とはいえないものになっている。しかし自作の限界として「若干難あり」なデザインもあるが、それも愛嬌のうちで、大量印刷の立派なデザインと異なるミニコミぽさも訴求点になることがある。
この自分のデスクトップで一品制作の世界とオフセットの大量印刷との間に、オンデマンド印刷やバリアブル印刷という小ロット・個別印刷が位置づけられたのだが、これは当初掲げた目標の半分を達成した程度かもしれない。今はPDFさえ出来てしまえば、デジタル印刷にまわさなくても印刷通販で小ロットのオフセット印刷が出来てしまうようにもなった。またオフィスではカラープリントの出来る複合機の普及で、その日必要な分だけ印刷することもできるようになった。要するにオンデマンド印刷の範囲は上としたから挟まれて狭まっていったのである。
今生き残っているオンデマンド印刷というと、DocuTechなどの登場以前からある「漢字プリンタ」NIP(ノンインパクトプリンティング)の系統の可変印刷である。これはそもそも電話の利用明細のごとく基幹システムからデータをもってきてフォームオーバーレイをするようなIT分野の仕事で、まず業務分析から始まって設計・ソリューション開発をする。だから対象はモデル化可能なルーチンワークの仕事に限られる。DTPやオフィスソフトで自発的に行っているプリントと異なって、利用する個人の裁量が入り込まないものである。つまりプリント以前の制作の条件が全く異なっていて、誰がやっても同質の結果が得られるターンキーシステムで、内部はブラックボックス化している。
この種のオンデマンド印刷はPostScript・PDFへの対応も最も遅かった分野であり、DTPの世界とはかけ離れすぎていて、Webやケータイにも基幹システムから情報がつながる時代になったのに、未だに他のコミュニケーションシステムからは孤立傾向がある。しかし利用明細がWebでも見られるようになったごとく、応用分野はもう独自の世界ではない。生命保険などの提案書のような個人情報も、これからは何種類も印刷するよりもiPadやAndroidなどでシミュレーションして見せるプレゼンになるかもしれない。つまりオンデマンド印刷は範囲が狭まっただけではなく、印刷ではないデジタルの世界からも攻め込まれるもとのなるだろう。
過去のオールインワン的な垂直統合のシステムはいずれも、試行錯誤が繰り返されているデジタルとネットのメディアとどこかでコンフリクトする。だから単純に垂直統合か水平統合か、という議論ではなく、変化しつつあるデジタルメディアと補完的な関係をもちつつ、利用者の視点でプリントのよさ、Webのよさ、モバイルのよさ、をそれぞれ追求していくことになるだろう・