投稿日: Oct 05, 2013 2:2:28 AM
日本のヲタクも数十年は頑張り続けて欲しい
アメリカの黒人音楽に着目したのは、アメリカの白人よりもイギリス・フランスの人たちの方が先行していた。イギリスはアメリカと言語が同じなので、戦前から文化的な行き来があって、有名な黒人音楽はイギリスでも紹介されていた。戦中戦後は連合軍仲間であって、黒人兵を含めて軍のクラブつながりというのもあって、直接的な影響を受けることがあった。それでもおそら黒人音楽の半分は白人には未知の領域だったろうと思う。つまりJazzなど戦前から高く評価された黒人音楽があった一方で、記事『音楽メディアのからくり 』で書いたように、レコード会社に録音してもらえない黒人音楽が半分ほどはあった。
この残りのR&B、soul、Blues、など、さらにもっと俗なchittlinミュージックに関しては、図のように時代と共に実態が明かされつつあり、今日まだ良くわからないのがchittlinミュージックとローカルなgospelである。この間60何年にわたってイギリス人フランス人を中心に黒人音楽の実態に迫る調査が行われ続けてきた。その反映として『キュレータは金になるのか?』で書いたヨーロッパのクラブでのDJの活躍がある。彼らの黒人音楽に対する執着は日本人の想像を超えるもので、ディスコグラフィーという音楽録音に関するメタ情報を充実させてきた。コレは昔から本として出版されている。
日本でも音楽ファンは多く居るが、例えば美空ひばりが日本コロンビアに残したもっとも古いレコードの記録で、
河童ブギウギ
製品番号:A-570-B
録音日 :1949/6/23
発売日 :1949/8/10
作詞 : 藤浦 洸
作曲 : 浅井挙嘩
編曲 : 浅井挙嘩
備考 : 松竹「踊る龍宮城」挿入歌
というのが公式サイトにある情報である。これはレーベル面情報ですね。
しかし同年のNat King Coleの録音記録の場合は、
Nat King Cole (piano, vocals) Irving Ashby (guitar) Joe Comfort (bass) Jack Costanzo (bongos)
Capitol Studios, Hollywood, CA, July 26, 1949
4980 | 51679-1 My Mother Told Me Capitol ET B-447, 1036; Mosaic MR27-138
4981 | 51678-1 Exactly Like You -
Part Of Me Capitol ET B-447; Mosaic MR27-138
What Have You Got In Those Eyes -
Top Hat Bop Capitol ET B-448; Mosaic MR27-138
Go Bongo -
Rhumba Blues -
Boulevard Of Broken Dreams -
というように、セッションに参加したミュージシャンと録音が行われたスタジオ、レコード番号以外にマトリックスやマスターの番号、レコードにはならなかったが録音された曲名などを含めて情報が集約されている。
大体R&BもsoulもBluesもGospelも同様の様式のdiscographyがマニアによって調べ上げられ、有名人のみならず、無名の人、あるいはお蔵入りの人の未発表曲までもが果てしなく探されている。これは実際にレコード会社やスタジオやミュージシャン家族宅まで押しかけて、古い資料を漁りまわり、交友関係、手紙、写真、ギャラの明細書など、ありとあらゆる物を調べた結果であって、まあクレージーとしか言いようがない。日本でこれくらいの調査をして居る人は数えられるくらいしか居ないのではないかと思う。
今eBayではこういう調査をした人の資料が放出されつつあり、特にレコード会社がプロモーション用に用意したプレスキットとかは人気であるようだ。ともかくメタ情報が増えると音楽の聴き方も増えていって、それでCDの選曲や編集も新しい視点で行われる。R&Bについては近年フランスから結構マニア向けのCDがたくさんでてきたのも discography 的情報の充実の成果だろう。またそういったところからクラブに新ネタを送り込むことにもなる。
discography は音楽でいうところの、温故知新に結びつく。
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