投稿日: May 25, 2011 9:14:13 PM
クラウドは震災に役立ったと思う方へ
想像を超える津波被害があったものの、津波を想定していたことが幸いした面も多くあった。例えば海岸線に沿った道路を堤防を兼ねるような盛り土で作っておいたおかげで、道路の山側に被害が及ぶのを止められた。過去の災害をふまえて復興時に手を打っておいたことに意味があったのだから、これからの復興にも同じ考えが受け継がれるべきだ。これは情報システムにもいえることである。
災害支援で最も切迫していたのが生活物資の補給であったが、なかなか必要な人に必要な物がまわらず、過不足の調整がうまくいかないとか、せっかく支援のために送ったものがどこかで滞留してしまうとか、緊急時のロジスティックは難しい。1ヶ月ほど経ってから何処の誰が何を欲しがっているかわかるようにしたサイトがボランティアによってたてられたが、似たものとしてオークションのようなネット上のマッチングシステムが緊急時に使えるようにしておくとよいだろう。Wantsを先に挙げておいて、そこにオファーを集めるというシステムをもっているオークションもある。
学校もつぶれてしまったり避難所になったりして機能しなくなってしまったところがある。教材も失われた。しかし義務教育なら全教材をネットで見られるようにしておけば、避難先でも家庭で寺子屋方式でもどこでも授業を途絶えさせないようにできるかもしれない。電子教科書とか個別の学校や先生も電子教材をクラウド上にも置いておくことは可能な時代である。かつてECと店舗の関係でクリック&モルタルという言い方があったが、これはクラウド&モルタルのようなものである。このような『どこでも義務教育』は災害に限らず、海外居住の日本人家庭とか、外国人で日本語を学んでいて日本に行って住もうと思っている人にとっても役立つだろう。
また電子書籍の自炊に励んでいる人がいるように、過去の文字・図像・音・動画などのアナログコンテンツをなにしろデジタルにしておくことは、直接それでビジネスが成り立つということはないだろうから、まずは権利問題の生じない個人の趣味嗜好のレベルで可能な限り進めておくことがよい。災害だけでなく日本の住宅事情から引越しや死亡で多くの文化財は処分されてしまうので、嵩張らないデジタルアーカイブで子孫に継承できることが望ましい。先日淵田美津雄自叙伝というのを読んだが、子息はアメリカに住んでいて、30年前に父の書いたものや蔵書をダンボール200箱をアメリカに送ってあって、そこから見つかった自叙伝が2007年に講談社から発売された。
今すぐクラウド&モルタルにして何か結果がでるかどうかわからないが、今後クラウド時代には新たな展開がありそうなことはいろいろ考えられる。