投稿日: Jul 17, 2014 12:12:0 AM
サーバーにあるコンテンツをダウンロードして読む電子書籍は、本の販売・購入よりも図書館利用のモデルであることは、電子書籍に当初からいわれていたことである。学術ジャーナルでは大学図書館などを介在させて、年間費用がいくらで何百誌が閲覧できるというサービスが定着している。
当然ながらこの仕組みは文芸本にも適用できるものでもあり、大学図書館サービスの延長に論文以外も提供しようというビジネスはある。香港の会社がアジアの大学を対象に同一コンテンツを英語・中国語・日本語・韓国語の4言語にして提供しようとしていたが、どうなったのかしら?
上の写真はパピレスが東京ドームの「Spa LaQua」内で電子書籍読み放題サービスをした時のもので、LANによるエリア限定ではいろいろある。
大学図書館が年間の利用料金を払っているのと同じような広域のサービスは、流行になりつつある月額定額の音楽の聴き放題のサービスで、漫画の世界にはすでに波及している。おそらく他の出版物もネット上の一種のブック倶楽部のような形で、それぞれある種のコンテンツをいろいろな出版社から集めて、読み放題のモデルが出てくることになるだろう。
こういうニッチ分野を対象にしたサービスは、「100万点あります」というような売り方とは対照的に、キュレーションに基づいて集客することになるだろう。例えば漫画ならば出版社の編集担当が新人発掘を行っていたようなカンジで、キュレータが埋もれたコンテンツを発見して、何らかのコメントのようなトリガーを用意してマニアのソサエティに投げかけ、その評価が表に出て、それに対して利用者が反応していくというサービスになるはずである。
そういう下地は既にあるわけだが、これは事業者が捏造できるものではないから簡単にビジネスには結びつかない。しかし利用者が月額何がしかを払うには、このキュレーションに刺激されたいとか、何らかの企画が必要で、書店のような本の羅列だけでは求心力を失う。
電子書籍の図書館モデルが定額読み放題のような形で今まで進まなかったのは、出版社に対応力がなかったからで、技術的な問題ではない。おそらくすでに発行済の書籍で、出版社がそこから最大利益を得たいと思っているアイテムはなかなか定額読み放題にはなかなか回ってこないから、このモデルをスタートさせるのは難しいだろう。
音楽のダウンロード販売も当時のスティーブジョブスのような強引な人が居なければスタートできず、P2Pが氾濫していたであろう。音楽産業にするとコピーの氾濫よりはダウンロードの方がマシと考えてモデルの乗り換えをしたと思う。
もう一つの課題は、果たして紙の200-300ページある本が定額読み放題に向いているのかどうかである。文芸ものならむしろ雑誌の連載のような形の方が読みやすく、毎月のプロモーションにもなるから、このモデルには合うかもしれない。また定額化すると短いコンテンツも多く登場することになるだろう。そういう意味では雑誌とも違う、またいろんなコンテンツのくくりかたが工夫できる、雑誌に代わるモデルが定額読み放題で可能になるように思える。
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