投稿日: Jun 09, 2014 12:55:49 AM
人の行動形態は本当に変化しているのか?
先般メアリーミーカーのトレンドレポート2014というのが発表されたが、内容はモバイル・スマホへのシフトが更に進むということに尽きるもので、これといったインパクトは無いように思った。数の上ではモバイル・スマホ利用が多くなるのは当然なので、それによって何がどう変わるかという社会的な効用が語られて、それがビジネスのヒントになるのではないだろうか。しかし大抵のトレンドレポートは数の話に終始している。数が問題なのはデバイスメーカーとか通信キャリアのビジネスであって、アプリから先の仕事(広告もコンテンツもサービスも)にとっては、最も多くの人が使ってい情報手段に乗っかるだけの話ではないのか。
ひとつ面白いと思ったのは、まだ印刷の広告に金を使いすぎているということで、別の言い方をすると、まだネットの広告の方が安くてパフォーマンスがよいという比較である。人が印刷物を見る時間は情報接触のうち5%しかないのに、広告費の19%を印刷に使っている。一方モバイルは20%の時間も接しているのに広告費は5%しか使ていないという。単純に考えると印刷の予算を削った分だけモバイルの広告が増えるといっているかのようだ。実際はそういう単純なことではないが、傾向としてはそのように進んでいくのだろう。
印刷が5%というのは情報量がそれだけしかないというのではなく、むしろ情報量が多過ぎて読み切れなく、かえって情報が伝わりにくくなっている面があると思う。一般に新聞を読む時間は10分くらいだという。これは新聞のせいではなく、人は生活時間の細切れの中で情報摂取をしているので、新聞など紙媒体を読むのにまとまった時間を取り分けている人はあまりいないということである。
この生活の細切れで情報摂取するという行動形態にフィットするのがモバイルであって、個々の情報が短いことが幸いしているだけともいえ、その意味ではモバイルシフトは進歩でもリテラシー向上でもない。人の行動形態に合わせているのであって、行動形態を変えているとも言い難い。
広告という観点では、新聞雑誌にどれだけ広告と詰め込もうとも、生活の細切れの中で一瞥されるだけであるということだ。広告の多くはTVのCMのように反復によるすり込み効果を狙っているものなので、モバイルシフトの最中ではモバイルに広告を打ちたいということになるのだが、ただでさえ狭いモバイル画面に広告を表示するエリアはそれほどなく、今は広告の増やし方をどうしたらよいか開発中であると思う。つまり広告のモバイルシフトにふさわしい解はまだないともいえる。
今はTVを受け身で見ていた人の中から、TVよりもモバイルに時間を割く人たちがでてきて、TV人口を覆すかというところまできた。しかし家庭でくつろぎながら能動的にモバイルを使う姿が主流になるとも考えにくい。だからTVをスマートTV化して能動的に使ってもらおうというのも疑問である。メアリーミーカーのトレンドレポートのインパクトの無さは、こういった疑問に応える要素が少ないことだ。