投稿日: Oct 02, 2012 12:29:11 AM
雑誌経営のどこが問題なのかと思う方へ
私がGoogleBooksでもっともお世話になったのは古い雑誌のバックナンバーだった。昔は洋雑誌のおいてある古本屋を巡っていろいろ探していたような情報が検索で出てくるのはこのうえもなくありがたい。またこういった雑誌はeBayのオークションでもよく売られるようになっている。記事『価値観の代弁者としての雑誌』で触れたJETも値段が以前の何倍にもなって今ではおいそれと買えなくなっている。記事『なぜ古い広告がおもしろいのか』では新聞雑誌の広告を切り取ってオークションで売っていることを書いた。特に珍しい写真を使った広告は人気がある。このように考えてみると、古雑誌の山もそのうち資産と見られるようになるかもしれない。
しかし近年の出版後退の中で最も衰退が著しいのが雑誌である。日本では書籍は下げ止まった感があったが、雑誌は消えてなくなるか、生き残っても部数が10分の1になってしまった。これは雑誌が人々の目に触れる場所が減ってしまったことも理由だし、海外のように購読予約制を取らなかったことで書店の減少の影響を受けやすかったと思える。ただ購読予約制のアメリカの雑誌でも減少なので、いずれにせよ新聞も含めて広告モデルの紙媒体は根本的な問題を抱えている。雑誌はWebで代替が利きそうに思われたが、課金すると立ち読みができない、広告がとれない、などがあって紙の状態からの移行は困難だった。
TVは総合的なチャンネルと専門チャンネルがあって、専門チャンネルが雑誌のように思えるが、音楽でもニュースでも専門チャンネルを維持するのは雑誌とは経営規模が大きく異なり、雑誌の世界からTVに進出するようなことはできなかった。むしろ紙の雑誌はもっとフォーカスしてコアなファン向けに編集していたし、その記事はTVよりも詰まった内容であることが特徴だった。雑誌にはそれぞれ一定のファンが居るのに経営的には難しいのは、TVと比較するとわかりやすい。つまり雑誌というのはTVで言えば番組に相当するようなもので、この番組ひとつひとつで会社を経営するというのは無理だろうなと思える。
またアメリカの雑誌は以前から立ち上がりが早いが終焉も早くて、世の移り変わりを反映するものといわれた。かなり短期間にコンセプトを変えながらビジネスを組み替えているのが雑誌の世界であって、そのこともTVの番組編成の変更と似ている。
スマホやタブレットの時代になって新しいデジタル雑誌のモデルを模索することが再び始まったのだが、今までのWebでの課金の問題、世の移り変わりに連動した組み換えの問題、広告の問題などを鑑みて、かなり大胆な新しいモデルが必要だろうと思われる。つまり従来の雑誌は記事単位のコンテンツごとに分解して、それらを自由に組み合わせてパッケージ化するとか、それらのコンテンツを有料購読者向けの何らかのサービスにしていくなどの工夫が必要だろう。少なくとも、過去の紙の雑誌は溜まるとかさばって部屋をふさいでしまうというデメリットがデジタルではなくなるので、過去のコンテンツの蓄積というのを活かしたサービスは目玉になるし、それはTVを上回る魅力になるだろう。
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