投稿日: Aug 20, 2010 12:1:35 AM
お互いの睨み合いにエネルギーを使いすぎと思う方へ
電子書籍は一般の新聞や雑誌でも話題になるほど、イメージは浸透しているにもかかわらず、日本では当事者でもこれからの戦略戦術を鮮明に打ち出しあぐねているように見える。紙の書籍がほぼ決まったレールの上を走るように制作・販売・購入されていたのに対して、電子書籍・eBookの位置づけや取り扱いはみんなが迷っているともいえる。このように先が見えない状況だからこそ、何らかの着想をもって新たにやってみようと考える人もいて、市場の動きがなくてもさまざまなところから参入がある。
別の見方では、電子書籍・eBookのビジネスは従来の出版での役割と似たように見えても、そのアナロジーでは通用しない要素が多く、果たすべき機能が異なれば売り上げの配分も異なるので、たとえ従来の顔見知り同士でもビジネスとしては仕切り直しになる。ざっと役割分担を示すと、以下のようになるだろう。
- フォーマット:Kindle(MOVI)、epub、PDF… どうやってオーサリングするか データ管理も
- ビューワソフト:操作性、表示能力、アプリケーションソフトとして考えるべき
- 販売流通:版元および書店に相当する ネット通販 ネット上のマーケティング
- 配信:通信会社、データセンター、課金の仕組、通常は黒子だがビジネスの背骨
- デバイス:専用機か、対象となるプラットフォーム インストールベースとか成長性
- コンテンツ:内容とコンテンツホルダの業種 報道・コミック・小説・学術…
- 読者:既存の書籍とかぶるか、新規分野か
これらの組み合わせをどのような提携・コラボレーションで行うのかによって、電子書籍・eBookの企業連合ができつつある。最近ニュースになった代表的なのは、
KDDI・凸版印刷・ソニー・朝日新聞社
ドコモと大日本印刷
SBはiPad
シャープ・携帯電話・日本電子書籍出版社協会
なのであるが、例えば自分の著述を電子書籍で出したいとか、どんな場合でも上記の7つほどの要素は思い浮かべないと、自分にとってふさわしいものなのかどうか判断できない。おそらくそういったことをアドバイスして適切な電子書籍・eBookの段取りをして、成果報酬をもらうような代理店がさらにこのビジネスの一角に加わってくるだろう。残念ながら上記の企業連合のような直接の当事者になってしまうと、代理店的な役割は果たし難い。また代理店になるには、会社の規模よりもこれらの専門的な知識・情報を追いかけ続けていることが重要なので、小企業でも可能である。
おそらく今見えている上記の要素やプレーヤーがすべてではなくて、技術革新に伴って今後もいろいろなものがでて来るので、出版ニーズがあるところにとっては、もっとも重要なパートナーは代理店のようなところになっていくだろう。だから上記の企業連合の会社であっても、今の段階で「何々派」という旗印で頑なになるよりは、どことでも連合できるという柔軟性も見せなければならない。もっとはっきり言えば、今の企業連合はメンバーがこのような事業をやりたいということで積極的な意味で集まったものではなく、黒船騒ぎの発端のように過去の利権を引きずったもので、読者やコンテンツホルダ不在のものではないかと思われるものもある。そこから脱して、次世代メディアビジネスのビジョンを考察するようにならなければ、代理店はできない。
自社の小さな欲得にこだわっていると、将来が見えなくなるという、自業自得に陥るので、代理店的な役割をするには、しがらみのないところに自分を置かなければならないだろう。