投稿日: Jul 02, 2015 2:21:40 AM
家で四角く扁平なブリキの缶容器が必要で探したのだが、もう殆ど見つからなかった。扁平なプラスチックのケースもなかった。昔はお菓子(クッキーや煎餅など)はブリキの缶容器に入っていて、ビニールテープで周囲を封印していたのだが、それが姿を消してどれくらい経つのだろうか?
それらは紙の箱に代わってしまったからである。紙箱が増えた理由はいくつもある。まず加工方法ではノリ付技術が進んで、あまり厚い紙にしなくも強度が出せるようになった。これは材料費の削減でもあるし、輸送や保管の面でも有利である。
ケーキを買う時に、紙箱はワンタッチ箱の構造になったので、その場で組み立てているように、紙箱の保管スペースは非常にコンパクトにできる。これはプラスチック箱よりも相当有利な点である。プラスチックフィルムでも紙箱のような組立構造はできるのだが、紙の方が印刷しやすいし、廃棄の際にも紙ごみになるので環境負荷が少ない。前世紀末頃からは廃棄性のよさで紙箱が見直されて、プラスチックから容器市場を取り戻したと思う。
要するに堅牢にして長期保管するものではなく、開封したらすぐ破棄するものに紙箱は向いていたのである。
お菓子の場合は、ブリキ缶容器で湿気るのを防いだとしても、一旦開封したら室内の湿気が入るわけだから、中の製品寿命が縮まってしまう。しかしお菓子はひとかけらごとに透明フィルムで封印するようになっているので、湿気のことを考えてプリキにする必要もなくなったのである。
よく小さなお菓子がひとつづ梱包されているのが過剰包装に見える場合があるが、袋菓子と同様で一気にどれだけ消費するかという目算で梱包しているのだろう。
今はお菓子の個包装もガス充填して日持ちおよくしたり、また風船状にすることで中身の型崩れを防ぎ、箱の中全体としては強度を上げるなど、細か事の蓄積の上で、ボール紙の強度以上の紙箱が作られている。ブリキ缶がなくなったのにはそれなりに長期の移行期間がかかったのだと思うが、そのおそらく20年くらいが代替技術の発達の時代であったはずである。
こういう細かい技術開発の蓄積と、容器利用の大きな転換という関係は、いろいろなイノベーションに見て取れることである。後の時代になると自動車は誰が発明したとか単純化して語られてしまうが、当然ながらビジネスの成立はどこかが単独で成し遂げたものではない。
これはデジタルメディアがこの先にこなれたものとなるために何をすべきかということを暗示している。
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