投稿日: Aug 25, 2012 12:41:26 AM
ステークホルダー全体を考えるべきと思う方へ
有料のコンテンツは創作された作品という面と、商品としての面の両方がある。それぞれに法律があって、創作に関しては著作権が、商売に関しては商法がある。例えばフォントのデザインでは著作権はとれないが、他人の作ったフォントを売ったりすると不正競争防止法で取り締まられるように、両者は補完する関係にあるようにも思える。しかし逆にそれぞれの法律の主旨と異なることも見受けられ、判断を難しくしている面もある。
キャンディーズの「春一番」などで知られる作曲家・穂口雄右氏とレコード会社の間の争いを、http://www.mynewsjapan.com が時々採りあげている。同サイトは有料のために記事全部を読んではいないのだが、かいつまんでいうと、氏が代表を務めるミュージックゲート社がYouTubeの音源と画像を多様な端末で視聴可能にするファイル交換サービスが著作権法違反にあたるとしてソニー・ミュージックレコーズや日本コロムビアなどレコード会社31社が約2億3000万円を請求した訴訟である(http://www.mynewsjapan.com/reports/1581)。ちなみに氏は今はアメリカでこの活動をしている。
キャンディーズの人気は今でも高いようで、穂口氏によるとYouTube上で「微笑がえし」も「春一番」も視聴回数は100万回を超え、動画にはキャンディーズに膨大な数のコメントがよせられていて、亡くなった田中好子さんを偲ぶ言葉も綴られていたという。ところがレコード協会は著作隣接権をたてに「微笑がえし」をYouTubeから削除させた。これによってファンのコメントも削除されてしまった。YouTubeのSNS的な機能としてはアップした人と見た人の双方向のやり取りに本来の価値があるはずであるし、この場合に穂口氏はキャンディーズでないにしても関連した作詞作曲家であって、曲を作る著作者の意識で双方向コミュニケーションを重視している。作曲家の立場では自分の音楽を誰にでも楽しんでもらいたいことからYouTube音源の共有サービスを始めたのだろう。
ところがレコード協会は著作隣接権者として被害を被ったという訴訟を起こしたのである。穂口氏はキャンディーズの「春一番」と「夏が来た!」の著作権管理の信託契約を日本音楽著作権協会に託するのを打ち切り、楽曲の管理はアマゾンを利用した管理システムにして、これに対してソニーグループが「春一番」の音楽配信を止めたという。しかし著作者と売る立場は果たして対立するものなのだろうか?
アメリカではYouTubeが海賊行為を助長するというよりはプロモーションの一部という考えがある。YouTubeにも著作権者が自分の作品がYouTubeに上げられたのを発見した場合に、①ブロック ②収益化 ③再生傾向の追跡、のうちから対応を選択できるので著作隣接権者として収益を得ながら動画を掲載し続けることが多く、「動画の削除」はほとんどない。日本からのアクセスのみブロックになっているという表示がよく出てくることからわかる。要するに日本のレコード協会の問題というか姿勢が音楽を楽しむ新しい仕組みを築くことの障害になっているといえるだろう。