投稿日: Jun 26, 2010 12:23:6 AM
デジタルで本の役割が変わると思う方へ
6月25日(金)に「iPad、Kindle、EPUB…電子出版にまつわるフォーマット議論の先に何があるか -- Kixプレセミナー2 プロセスのデザイン、制度のデザイン、組織のデザインの考察」が行われた。アスキー総合研究所所長遠藤諭氏は今の電子書籍やiPadに対する意識調査の紹介とクラウドの中で購入したコンテンツをどこからでも自由に閲覧できる可能性を話した。ソシオメディアの川添歩氏は今の電子書籍が紙の本以下である点とデジタルのメリットを出していない点を指摘し、それが埋まるとこんなことも可能になるだろうというプレゼンをした。慶應義塾大学環境情報学部増井俊之教授はユーザー経験を元にアクティブなユーザがeBookの周りでやりたくなりそうなことを話した。産総研社会知能技術研究ラボ主任研究員和泉憲明氏はサービス工学という視点で、紙のドキュメントのどこかの部分がサービス化して生活が変わり社会全体としての最適化の一翼になるという予測をされた。
個々の話は別に採り上げたいが、全体の印象として一番強かったのは、私に限らず川添歩氏のプレゼンの中にあった電子書籍を介しての情報共有ではなかったか。プレゼンではKindleで他人が本のどこにアンダーラインを引いているのかを共有するサービスをベースに、本のどの箇所が注目されているかをヒートマップのように色分けで示す案や、書籍の最初から最後までのページ並びのどこが注目されているかもヒートマップ化する案、またBookStoreの書架の画像では書籍から付箋がはみ出ているような表示をして人の注目を見える化するとか、twitterのようなソーシャルメディアでその人がどんな電子書籍を持っていて、いまどれをどこまで読んでいるかなどの表示のアイディアについて、そういうのがあると役に立ちそうだと思った人が多かったようだ。
他にもいろんなアイディアは考えられるが、あまり手の込んだ情報共有はされないだろうというパネラーの見解もあり、次の増井俊之氏も、気合を入れなくてもできる小さな改良が進むだろうとの話とも共通している。和泉憲明氏は最後に、紙の時代はスクラップや情報整理が切り貼りで直感的にだれでもできていたのが、今のWebはbookmarkとかファイル保存では、紙に匹敵するところまでいっていないと指摘した。そもそもサービス工学が叫ばれたのは大量生産大量販売大量消費は効率化を目指して行われたはずなのに、実は必要以上に不要なことを増加してしまって無駄が多くなってしまったのに対して、社会全体での最適化に向けたスキームを作ろうというところからきている。
その考えで紙の消費量の最適化も電子出版で可能になるだろうと思われる。しかもコンテンツが更に生きる道がある。遠藤氏は本を介した人々のコミュニケーションという点にも着目していた。コンテンツの利活用を促進するために本が提供していた機能を分解して、そこから何かを取り出してデジタルとネットでサービス化すると、利用者にどんないいことがあるか、という考えでもう一度このセッションの続きをするとよいと思う。