投稿日: Oct 15, 2012 12:34:41 AM
このままではビジネスが継続しないと思う方へ
Appleは独自の価値観を提示して、それに賛同する人に買ってもらうようなスタイルだから、広告宣伝においても押し付けがましい表現とか、オマケつきとか、使わなきゃソンといった安ウリ的なことはしてこなかった。これはアメリカのコンシュマ向きマーケティングの反対のようなことである。ただしAppleはその独自性を保つためにもビジネス全体を垂直統合のようなタガが必要になる。よく垂直か水平か、という議論もあるようだが、その前に「どうありたい、どうしたい」という目的をヌキにビジネスの方法論だけ話しても意味がないように思う。
一般に水平といわれるのはオープンシステムのことで、Appleに対してはAndroid勢を指すのだろうが、Androidを提供しているのがGoogleという一企業であることを考えると、以前のMicrosoftを大して変わりはしない。MSのOSが有料であったのにLinuxの上にのっかっているAndroidなどは無料という点が違うんだということだろうが、無料なら全てによいことともいえないだろう。Amazonがタブレットを廉価に提供する際に、ハードウェアは原価で提供して、コンテンツで$1づつ稼ぐという発言をしているが、原価のハードウェアを使って無料のコンテンツで楽しもうという人も多いだろう。要するに他人のビジネス領域は儲けゼロで挑戦して自分のビジネスを有料化しようということがお互いに始まっているともいえる。
垂直統合の典型としては日本のケータイ電話があり、キャリアとデバイスとコンテンツがセットになっていて、マーケティングや課金の仕組みとしては効率的だったかもしれないが、そこでのビジネスはスマホ・タブレットのようなオープンな時代になった時には脆弱であって、あまり競争力を高めていなかったことが明白になった。つまり垂直統合で守られていると個々のユニットが強くはなれない傾向がある。
しかしキャリアとデバイスとコンテンツがアンバンドリングになると、前述のようにお互いに儲けゼロ合戦のようになってしまう。そして勝ち残って多くの顧客を集めても、経営が揺らぐことをCompuServe・AOLなどパソコン通信の時代から過去にたくさん見てきた。顧客はいつもいろんなものを比較しながら流動しているものであることを考えるならば、顧客の数をひけらかすことはあまり意味がない。それよりも経営を維持しながら適切な開発・投資をして自分のビジネスを強化していくことが重要だ。
どうしても投資を受けるとなると、うわべの数字が優先してしまうのだろうけれども、コアコンピタンスの強さをちゃんと評価できるようにならないと、新しいベンチャーを排出することはできないだろう。AppleはSteve Jobsという特異なキャラクターが生み出した奇跡と考えるのか、従来のアメリカ型ビジネスを再考するものとして考えるのかということでもある。
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