投稿日: May 31, 2014 12:51:29 AM
日本のオークションの限界
YouTubeに珍しいレコードをアップする人が多いので時々見るのだが、はっきりいってキーワード検索だけでは探し辛いし、アップした方も見つけてもらうのが大変である。この問題をYouTubeはある程度解決している。だいたいは右欄の関連動画を辿って芋づる式に見ていくわけだが、これは非常によくできていると思える。私が探してでも見たいものは、今のCDには収録されていない「失われた音」で、再生回数が数十から数百程度しかないものが多い。つまり世界で数百人くらいしかシェアしていない音源である。それが途切れないで次々興味のあるものが右欄に表示されるのだから、YouTubeはたいしたものである。
例えば有名なプロの音楽家の曲を聴いていても、その曲をやっているアマチュアとか、昔のレコードとか、その曲が使われた映画の1シーンなど、わざわざソースの在り処がほどほどにセレンディピティになるようになっていて、結構知らない世界に誘導する要素があり、似たモノばかり表示されて飽きてしまうことを防いでいる。
つまり検索に関連したオススメとしてよくある、「これを見た人は、これも見ている」という相関の強いものだけではなく、「こんなものもありますが…」という処理もされている。これは前者が利用者のふるまいから相関を見つけ出しているのに比べて、後者は曲名とか曲調とか対象物の相関で、これは従来はメタデータで管理するものを、自動で解析して属性化していると考えられる。
こういう検索の高付加価値化への取り組みはアメリカでは盛んで、検索エンジンやAmazon以外にもeBayはeBayなりに独自のものを編み出していて、それが多アイテムをネットで扱うノウハウになっている。記事『ライフスタイルの危機』では、eBayにはアナログのレコードが400万あることを書いたが、日本のヤフオクには60万ほどあるのにも拘わらず、ヤフオクの検索機能は非常に幼稚で、多くのレコードが埋もれてしまってビットがつかない状態になっている。
おそらくヤフオクに出しても見つけてもらえないという不満は高まっていて、だからオークションの広告に力を入れて、そこでも商売をしようとしていると推測される。
YouTubeの楽曲を見ていると面白いことがいろいろ起こっている。冒頭の古い珍しいレコードの場合は、家族が「これは私のお爺さんがだしたものだ!存在を知らなかった」というような身内のコメントがついたのをいくつか見たことがあるし、身内がまだ未発表の録音テープを保管しているというコメントもあった。
以前の記事『Hollywood Fats 伝説』では、1986年に32歳で死んでしまった天才ギタリストのことを書いたが、近年になって当時一緒にバンドをしていた人が、カセットに録音して持っていたライブやリハーサルをYouTubeに上げるようになって、それが刺激となって新たにCDが出るようなことも起こったが、さらに未発表の曲がCDにできそうである。
これらがCDや楽曲のダウンロードと違うところは、YouTubeのコメント欄に当時の情報が書かれて、それに関連した別人のコメントも付加されていくことである。昔なら過去の情報を調べつくしてから出版していたようなことが逆の順序になったと考えられる。当然ながらYouTubeでは権利問題の処理などする前に公表しているのである。
残念なことに日本でいくらネットを利用していても、検索の進歩とかソーシャルなメディアの成長が体感できないように思う。