投稿日: Mar 14, 2012 1:13:44 AM
原子力関係者がどうしてここまで非科学的かと思う方へ
東関東大震災によって福島第一原子力発電所が原子炉の炉心溶融を起こしたことは、直接の死者はいないといわれるが、震災の被害者を桁違いに増やしてしまって、復興を遅らせる大きな要因になってしまった。特に放射性物質に関する科学的知識がこれほども欠けていたとは唖然とすることがあることを、記事『放射能がうつる?!』に書いた。風評が直接原発とは関係ない被災地の復興の足も引っ張っている。この1年間で放射能関係は同じようなことが毎日繰り返しマスメディアに流れているものの、国民的理解が進まないのはなぜだろうか?それは専門家の不足、研究の不足につきるだろう。ネットやTVに引っ張り出される「専門家」の中で、科学的jに納得のいく説明をされている方は、原発開発や運営側の人はおらず、放射線治療とか周辺領域の方が多く、そういう方は官庁の原発行政からはずされている場合が多い。
原子力利用というのは、科学の先端的な分野だと思っている人もいるが、日本に60機もある軽水炉は40年前に設計されたもので、設計者はもういないこともわかった。つまり40年前の技術のコピーを繰り返していたのが日本の原子力開発であったわけで、当然ながらそのような分野に意欲的で優秀な学者も技術者はめったにいないであろうことは容易に想像できる。コンピュータで言えばホストコンピュータで使うCobolやFortrunの専門家のようなもので、今の社会の課題に挑戦するような分野では無くなってしまっている。そのタコ壺人たちのことを原子力の「専門家」として原子力行政が行なわれていたと思われる。
道理でSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)のようなものがあっても利用されず、原発の作業もロボット化されておらず、監視やモニタのシステムも民間の警備会社のサービス以下のような状態で、およそ近年のイノベーションとは隔離された世界になってしまっていた。また世の中とのコミュニケーションもうまくいかず、ディスカッションでもすれ違いが多くみられた。原発が安全というのは、核兵器のように爆発はしない、という程度の意味らしく、放射性物質の人体の影響のことをテーマにしている際でも、福島原発で漏れた放射性物質の総量がどれくらいあって、それに対してどうしなければならないとう話には進まない。すれ違った議論で時間切れというTV番組がいかに多かったことか。
昔は核物理学は大学でもレベルの高い領域であったと思われるが、ルーチンでステレオタイプな原子力行政が金を使いまわる一方で、放射性物質の解明やイノベーションが止まってしまったようだ。キュリー婦人は被爆で体を壊して亡くなった。活字開発の初期は取り組んで鉛毒で亡くなった神父さんもいた。核を産業利用で金を回す仕組みとしてだけ使う社会は、それ相応の報いを受けてしまう。でもそこから科学的な解明をして後世に何か残そうというのが本当の科学者の態度であり専門家ではないだろうか。