投稿日: Jul 25, 2014 12:48:9 AM
記事『誇りなき労働』では、アメリカの食品加工業者が中国工場で期限切れのチキンを使っていた云々のニュースを背景に、世界一安く仕入れることがビジネス勝利の道のように考えることが、最底辺の収奪・搾取につながっていることを書いた。ボランティア活動のように自分の取り分を放棄してサービスを提供するのは一向に構わないが、仕入れ元に払うべきものを払わないで安値で提供しようとすることが、どこかに歪をもたらし、最底辺に不正をさせてしまうことにつながっている。
これはDTPとかBPOで中国に外注するのにもいえることで、日本でパソコンの作業をするとなると人件費が高いだけではなく、ソフトウェアとかフォントとかもちゃんと契約したものを使おうとすると、年間で相当額の費用が発生するが、それらを中国に押し付けてしまうと、結局はコピーソフトで作業していることになる。これは一種の責任逃れであって、自分のところは不正コピーはしないが、不正コピーを前提にした外注をしているのだから、事実上は共犯に値する。
実際には契約上は不正がないことを前提にすることはできるが、実際の値段が正当なやり方をしていては成り立たないものを黙認していると、共犯と言えるのではないか。正当なやり方でも工夫をして価格を下げることは当然できるのだから、価格の前提となっている作業プロセスをちゃんと説明できれば、他の会社よりも安いとしても不自然ではない。
結局サービス残業にしても同様のことで、必要な作業プロセスとか工数をちゃんと把握していないから、管理が不能になるし、人の能力もよく見極められない。これを改善するには仕事の棚卸をして、不必要なことはしないとか、業務とスキルの関係をちゃんと整理して、役割分担によって最短・最善のプロセスが組めるようにしておかなければならない。
コンプライアンス関係で何々認証というのがあるが、それらは認証という旗が何に対して与えられているのかというと、管理可能な仕事のやりかたをしていることが第一で、管理のはっきりしないところが保障などできないという考えである。
日本の苦手なのはそういう仕事の仕方をすると、まるでお役所仕事のように四角四面になって融通が利きづらく、イノベーションを排除しかねない点である。つまり管理可能ということは、現状固定ととらえてしまう日本人は多いと思う。しかしそれではイノベーションは管理できないことになってしまう。それは間違いだろう。よく引き合いに出されるようにアメリカの1960年代のアポロ計画のようなものは、未来に向かっての「管理」であり、管理のノウハウとは別に何らかの哲学がその裏にはあるように思える。
Top → Articles デジタルメディアビジネスの記事 過去記事→Archive