投稿日: Apr 09, 2016 1:11:13 AM
bluesを聞き出した時に最も馴染みにくかったのがcity blues で、レコードを買うのも後回しになって、10年~20年後にぼつぼつ買うようになった。アメリカの黒人音楽で1940年代から50年頃までは中心的な役割をしていた city blues は jazz vocal とも大いにカブるものだが、その後はだんだん録音されなくなっていって(jazz分野は別として大衆音楽としては…)、R&Bの45回転盤の世界では一レパートリーとして細々と残ったに過ぎない。これはダウンホームブルースの状況と似ている。
しかしシティブルースもダウンホームブルースも録音が減るとブルース史を書く人には「衰退」とされてしまうのだが、歌っている方にとってはそんなことは関係なく自分のレパートリーとしては受け継がれている。歌手の側からすると、持ち歌の表現様式が city blues から R&B になったり Soul になったりしているだけで、歌いっぷりもちょっとは違うかもしれないが、その時々にあわせて現代的にやってきただけのことなのだ。
それを図示すると以下のようになるのではないか。
City blues の録音が減っていった1950年代では、そのテーマはR&Bとしてリメイクされていく。また公民権運動の頃のSoulが隆盛の時代になるとSoulとしてリメイクされる。
しかしひるがえって見ると1940年代からの city blues の隆盛期には、それまでのスタンダード曲やカントリーまでが jazz vocal とか city blues に取り込まれていったのである。つまりある音楽形式の隆盛期というのは、人々の歌う歌を呑み込むというか、その音楽様式に引き込む活力があるということだ。音楽のトレンドというのは曲目とは別の次元の何かである。
そして古くからある Cry me a river とか Funny how time slips away はjazz(city blues)-R&B-soul と受け継がれているが、現代的な様式での音楽解釈にもクリエイティビティはあるし、またR&Bの時代の録音、city blues の録音もそれぞれ味がある。アメリカ黒人大衆音楽のアーカイブ化は特にヨーロッパでは進んでいて、過去に一定以上の人気を博した音源はCD化されているともいえる。
実は自分の持っているレコードでそのような比較はしてはいなかったのだが、YouTubeで見ると、こういったスタンダード化した曲については古今東西の録音が並んで出てくるので、どうしても聞き比べてしまう。八代亜紀や青江美奈まで出てくる。
日本はレコードレーベルは少ないし音楽番組も少なく、どうしても音楽産業はマスマーケティングに支配されているように思えるが、ヨーロッパのCDによるアーカイブとかYouTubeは音楽の多様性をかいまみせてくれて、ロングテールに寄与していると思う。
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