投稿日: Apr 23, 2010 12:18:31 AM
新たなコミュニケーションの可能性に期待している方へ
人々はメディアに対していろいろな期待があり、その最大のものは信頼性であろう。しかし人々はメディアの信頼性を評価する方法をもたないので、期待が幻想になってしまうことは過去からずっとあった。今日のデジタルメディアにおいても同じである。印刷原点回帰の旅―(11)メディアの幻想― ジャーナリズムとマスメディア という記事は私のしゃべったことを編集者に再構成してもらったものであるが、このとき話したたとえとしてQuarkというDTPのエピソードがあった。以前のQuarkの社長はイラン国籍のユダヤ人富豪という人で、趣味でQuarkをやっているようなものだった。Quarkはいちはやくpassportという世界の言語に対応したソフトをだしていて、その元はソ連や東欧の地下ジャーナリズムのために開発したものだった。
社長の家に行った時に聞いたのだが、共産主義の崩壊をさせるためにソ連や東欧の地下組織にQuarkを無料で配っているといっていた。実際にベルリンの壁は崩れることになるのだが、それは西欧からのTV放送が大きな役割を果たした。地下組織でDTPをやっていた人は紙メディアの力を信じていただろう。現実には紙メディアに体制をひっくり返せるものではないが、紙メディアに対する期待はいつしか目前の結果に裏切られても途絶えずに続けていく幻想の世界を作り出していったと考えられる。
twitterでは従来のSNSのようなバーチャルな仲間だけでなしに、有名人をfollowしたりfollowされたりするので、自分が何らか人とつながっているという感覚が、さらに自分にとって好ましい人との関係にまで拡張していく。しかしSNSの仲間が幻想であるの以上に、有名人にfollowされているとしてもbotの可能性が大なわけだから、幻想を拡大してしまったのがtwitterであるともいえる。
メディアの大小にかかわらず、ほっておくと消え入りそうになる人の期待感を持続させるのが、意思や気持ちを可視化するメディアの役割のひとつであろう。