投稿日: May 26, 2011 10:15:30 PM
紙のビジネスに危うさを感じる方へ
後の時代になると20世紀と21世紀では情報メディアの利用が変わったと言われるだろう。実際には2001年に突然変化したのではなく、+-5年くらいの幅があってその中にWindows95からFacebookまでの大きな変化が詰まっている。GoogleとかAmazonもその間に入る。こういった変化は直接プリントや印刷とは関係ないように思えるが、日本経済に落とした影や、利用者の意識変化などにより、20世紀に描いたプリント・印刷の未来ビジョンが通用しないことは増えた。いやいろいろな前提条件が逆転してしまった。
日本の企業は終身雇用であったので、余剰人員対策として子会社や別事業部として本業のサポートをする業務を任せる傾向にあり、印刷会社やプリントセンターが作られたが、そのような余裕はなくなり、アウトソーシングや海外へのBPOに切り替わり、一般企業へのプリントソリューション提案というのはでき難くなった。製造業から小売業まで社内で印刷やプリントにかかわる余裕は減った。これは出入り業者にとってもマシンのベンダーにとっても市場開拓が難しくなったことを意味する。
印刷会社などはオンデマンド印刷のようなサポートをクライアントに提案するには、何年か先行してサービスを積み重ねなければならないが、そのような投資のゆとりもなくなった。また一般企業の情報環境の充実で、かつては先行サービスをして「囲い込み」をするはずだったのが、個人情報保護などコンプライアンス意識が高まると逆風になった。またかつては従来の印刷受注のプラスαとしてオンデマンド印刷を想定したのに、印刷需要がマイナスに転じて、オンデマンド印刷はこの傾向に拍車をかけるかもしれない要因となり、提案は下火になった。
プリントエンジンのベンダーにとっても同様で、オンデマンド印刷によるOneToOneマーケティングとか在庫レス、ShortRunなどの期待を売っていたようなものだが、これらの有効性の実証は困難であり、またカラーの表現はWebやiPhoneなどで自由にできるようになったために、プリンタで何もかもカラーにする必要はなく、多くは「白黒でもいいんじゃない」、という逆行も起こった。Webなどの制作がCMSやBlogによりオフィス内でも容易になったのとは対照的に、紙の出力のための制作方法はあまり進展せず、オンデマンド印刷の提案でも表現レベルは自分たちのデスク上で手作業で制作するのと同じような Word、Excel、PowerPointの域を超えることは難しかった。
利用者や情報の受容者の環境は21世紀の幕開けとともに、一番最初に情報を発信するのも受け取るのもデジタルファーストになり、記事『懸念される紙媒体への逆風』で書いたように画像は72~96dpiが当たり前になると、後でプリントには使いにくくなる。ECが広まると共に身近にはチラシに依存しないネットスーパーが登場するとか、紙がなくてもビジネスが成り立つことは当たり前と思われるようになる。そんな時代にあっては、紙があるとどう有意義であるのか説明できないと、紙にプリントするアプリケーションは採用されない。惰性で印刷発注がされることは減っていくのである。