投稿日: Jan 28, 2016 12:53:36 AM
Pew Research Centerがクラウドファンディングによるジャーナリズム・プロジェクトの調査を発表した。
Webには詳細はかかれていないのだが、新聞とかニュース系のテーマよりも、雑誌やドキュメンタリーに関するプロジェクトの方が10倍くらい多いように見える。現実には紙の雑誌は減り続けていて、新規創刊は困難な局面にある。しかし雑誌を出したいとか読みたいという潜在的な欲求はまだ多く残っているのではないかと思わせるものがある。それが従来の紙のメディアではなく、新たな資金提供の工夫に現れていると読み取れる。
人々が意義があると感じるのは雑誌という紙の束ではなく、ジャーナリストの活動そのものであって、何に取り組んでいるのかというテーマやトピックスが資金を集めている。その活動を通じて得られた様々な情報は、その時々に応じて、放映でもYouTubeでも執筆でも写真でもBlogでもtweetでもあらゆる手段で拡散されるのが今日では自然だ。
しかし少し時間が経つと中間的なまとめとしては雑誌の記事のようなものが表現形としては似つかわしく、さらに詳細にまとめると本になるというように、ひとつのテーマが先にあって、それがいろいろなメディアを経由して、多くの人のさまざまな角度からの関心を引き出し、関心を高める、ということになるのだろう。
このモデルをうんと矮小化すると、ライターがBlogに書いたものを、雑誌その他の原稿として流用するとか、またそういうライターの書いたものを引用・流用するバイラルメディアが登場したようことも共通の背景があるといえる。ただこういった現状のネットメディアは現場には行っていない第3者が書いたりdisったりしているだけで、炎上することはあっても、有意義な議論に発展することも、そこから知見が広がっていくこともなかった。よく「祭り」とたとえられるように、静まってしまえば元に戻るわけで、ジャーナリズムのような指向のものではない。
とすると、よいメディアを産み出すためには、出来事を遠巻きに見ながら原稿を書いている人を起点にするのではなく、昔からのジャーナリストのように、自分の体ごと現実社会に切り込んでいく人を応援して、その人の見たり考えた軌跡を効率的にコンテンツ化する流れを作り出すことが必要である。
それは原稿の入れ物としての「新たなメディア」を必ずしも発明しなければならないことではなく、ジャーナリストはすでに誰でも使えるようになっているSNSやBlogを使いながら、その人の発信した情報を時系列とかテーマ・トピックス別にまとめて取り出すことさえできれば、基礎的な情報拡散はできる。
後に雑誌や本にまとめ上げられても、元の情報を辿れることが望ましいので、そういうSNSやBlogを横断する仕組みと連動した雑誌的メディアというのがあり得るのかもしれない。
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