投稿日: Jul 09, 2014 11:45:54 PM
Googleの検索サービスに対して、2011年11月にフランスの女性が「過去の写真の消去」を請求して勝訴して以来、忘れられる権利が社会的に話題になってきている。最近は検索結果ページの下に削除をしたことを示す記述が出ることも多い。2012年1月にEUは「一般データ保護規則案」において「忘れられる権利」を明文化し、個人データ管理者はデータ元の個人の請求があった場合に当該データの削除が義務づけられることとなった。その後日本でどのように議論が進んでいるのかは知らないが、EUではGoogleに対してリンクの削除を命じる判例が出るようになっている。
Googleは「忘れられる権利」というものを承服してはおらず、リンクの削除に応ずる場合でも、削除をしたいきさつをちゃんと載せるようにしている。たいていの場合は情報を載せられた人の側に何らかの不利益をもたらすから削除要求をするのだろうが、裁判結果などは日本でも官報に載っていて検索可能である。だいたいアメリカではアメリカ建国以来の主要新聞紙面は全部アーカイブされているくらいで、新聞を含めて過去印刷物のアーカイブがネット上に山ほどある今日では、しらみつぶしに削除要求をすることは不可能になっている。
また民間でも「魚拓」をとるような形でWebページの中から削除されそうなものはあらかじめアーカイブされるようになっている。犯罪が発生した多くの場合は、加害者・被害者の直近のホームページは検索エンジンから落とされてしまうが、その前に「魚拓」がとられることが多い。そしてそれが事件のまとめサイトなどに貼り付けられる。
こういう情報を完全に封じ込めることは問題があるし出来ないであろう。不利をもたらす情報で問題なのは風評や捏造や虚偽情報であり、それらがもっもらしく世に出ることを止めなければならないことは分かるが、それにしても「ここに問題がある」と指摘するのにも引用は必要になることがある。忘れられる権利は、知る権利よりも上位に行くことはないであろう。
前職でも時々裁判沙汰の人がやってきて、自分の正しさを証明するための情報を探したり、また場合によっては手だ助を求められたことがあったが、世の中には白黒がはっきりしない問題も多くある。アウトラインフォント関係の特許も実際のところはよくわからなかった。
おそらくGoogleは2段階にサービスを分けるのではないかと思う。つまり一般の検索結果には削除依頼の情報は直接は出ないようにはしても、留保とかコメントつきで出せる仕組みも一般化するのではないだろうか?むしろ白黒の決着がつかない問題こそが、目下の議論に最も必要な情報だろうからである。