投稿日: Jul 07, 2011 10:27:14 PM
電子出版EXPOで気づいたこと
東京ビッグサイトの国際電子出版EXPOに行ってきた。「国際」と冠がついたので「ガラパゴス」のシャープは出展できなかったのか?というのは冗談として、国際と謳ってもいわゆる黒船不在ではインパクトに欠ける。言い方を変えると、eBookが出版産業の業態を変えるという凄いことが起こっているという雰囲気はなく、例年のような和気藹々とした雰囲気であった。これでいいのだろうかと思うほどだ。制作系の出展が多いが、それは出版ビジネスのごく一部であって、配信までのビジネスサポートはまた別の出展者になっていたりする。これらはもしKindleの日本語化ができていたとすると、吹っ飛んでしまうかもしれない。それほどKindleの自主出版は制作から配信まで簡単だ。しかも世界中に売ることができる。そうなるXディは迫っているのだろうか?
今日本で電子書籍関連の投資をするならば、Xディの先に何をするかを考えておく必要がある。その視点で電子出版EXPOを見てみて、いくつか気づいたことがある。まず「ガジェットのニュースはn倍拡散」の法則にしたがってカラー電子ペーパーが話題になっているが、専用読書端末は値段が勝負であろう。中国のモノクロ端末「漢王」の現物を手に取ってみたが安そう!どこまで価格は下がるのだろうか。タブレット型は学生にとっても電子辞書のような必需品になるだろうと思える。一方でスマホは普及数はすごいが書籍端末としては制約が多い。今回モリサワが雑誌のようなビジュアル紙面をスマホに出しつつ、テキスト枠を別Windowに開いて読みやすくするものを見せていた。紙媒体を無理やりスマホで見るにはこれしかないだろう。スマホは電子書籍とは一線を画するようになるのだろう。
電子書籍はコンテンツ輸出の最先端になるはずだ。しかし仲介ビジネスはブックフェアの本業であるにも関わらず、割と少なかった。熱心だったのはクリークアンドリバーで日本の書籍を中国で出す手伝いをしている。中国人のライフスタイルが変化するに連れて、実用書やエンタメのニーズは高まると思われる。コンテンツの使いまわしという点では、国内電子出版配信でBookOffの100円本と戦うよりもよいのではないか。
自主出版というのも少しづつ増えている。自費出版というほど金がかからないのである。Blogのシーサーは無料で電子書籍を作って書店に置けるサービスをしている。売れたら70%が著者に入る。このようなサービスは増えるだろうし、どのBlogでもePubに吐き出して再編集するくらいのツールは出てくるだろう。つまり書き手にとって最初に原稿用紙に相当するものがBlogであって、それを冊子のように再編集するツールがこれからは必要に思える。その点ではWikipediaのようにネット上で共同編集が可能なサービスがもとめられるだろう。シーサーのサービスもそういった面はあるし、専門ツールとしてはアンテナハウスのクラウド型汎用書籍編集・制作サービスがある。これらは配信やデバイスに関係ない世界だから、Xディのあとでも必要になるだろう。
技術的な展示の場合は青空文庫を使ってのリーダーのデモがちらほらあったが、それでは無料ぽさが目立ってしまって、どうみても魅力的な商品ではない。やはり電子書籍は書き下ろしで勝負しないと、BookOffには勝てない気がする。
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