投稿日: Jan 16, 2012 12:42:18 AM
アジア市場を考える方へ
海外に出かける用事というのは、前世紀ではほとんどアメリカ行きだったのが、21世紀に入ってからはシンガポール・台湾・香港・上海・大連・北京・ソウルと、東アジアの方が多くなった。これはアジアの経済成長が激しいことと、日本からの外注が増えたことと、東アジアへのIT関連の技術移転が進んで製造能力が世界均等になりつつあつこと、などなどいろいろな要因がある。旅行をするとその国の情報リテラシーとかメディア産業というのも肌で感じることができるのだが、それと経済成長はどう関係しているのであろうか。
下の図のJのところは日本の経済成長をグレイで示した場合に、印刷産業の成長率がどうであったかを赤線で、感覚的に示したもので、経済成長のピークに向かう段階では、実態の経済成長以上に印刷業は伸びる。これは新ビジネスに対する投資や期待というのが印刷需要を作り出しているからだ。同時に出版とか他のメディアも伸びる。計画や投資が増えると新しい情報が次々に出てくるからだ。しかし経済成長がピークを超えると、新規案件がガタッと減って印刷の伸び率は平均以下に落ち込んでいく。それが現在の日本で、印刷は下落産業の下から何番目になっている。
以上のような経済成長とメディアの成長の関係は、韓国や中国でも似ていると思うが、異なる要素も多くある。上の図のように同時並行で起こっているわけではなく、KやCは後追いであるだけでなく、成長カーブも異なるからだ。また出版の多い少ないという環境の違いもある。韓国でも印刷は衰退との見方が主であるが、日本と違うのは日本ほど皆が生産性の高い設備投資をしてこなかったので、衰退とはいっても日本がローンを抱えているような状況には無く、手作業部分が多い小規模の紙加工の方がフレキシブルに経営できるように見えた。つまり印刷業の成長の山は低かったといえるが、それは国内市場が小さいことや出版の自由が得られたのが遅かったからだと思う。そして今の時代になると紙メディアのベースが少なかった分だけIT化したメディアの方が大きく伸びているのである。
一方中国は(台湾香港を除く)、出版の制約があるのでまったく自由に印刷物が増えるということはなく、経済成長の目覚しさの割には印刷の伸びは低い山であるが、ある意味では着実に伸びる。印刷物の内容としては、パッケージが多いのは軽工業が多い東アジアの特色であるが、意外に書籍が増えていて、これはリテラシーの向上に関係している。ところが雑誌や新聞は衰退で、これは完全にネットメディアに取って代わられ、さらに紙媒体よりは2-3桁も大きいリーチをもっていて、これから紙媒体が出るとしても富裕層相手とかニッチなものに限られるのではないかと思わされる。
韓国では近年マンガ週刊誌がほぼ壊滅状態であると聞いた。これらの国での紙の出版は可能性がないわけではないが、日本が経験してきたようなビジネスモデルとはまったく異なるであろう。逆に日本も紙の出版モデルを離れてネットメディアでビジネスを考えるならば、東アジアに広くリーチできる可能性がある。