投稿日: Jan 23, 2016 1:27:25 AM
私はアメリカ黒人Bluesの45回転盤を50年間ほどかけて集めていたわけだが、ごく一部に白人のBluesというのもある。それはJohnny Winter の駆け出し時代のようなロックに通じるものもあるが、カントリー&ウェスタン(C&W)の人がギターの弾き語りをやっているBluesの方が多い。これらはいずれも1960年代のものが中心だが、数は少なくとも白人も古くからBluesの録音を残している。音楽としてみると白人のBluesでも黒人と変わらないものも結構ある。しかし第2次大戦後になると白人と黒人音楽の進む道は変わっていって、むしろカントリーBluesの録音に関しては白人の方が多い時代を迎える。
ここで言っているのはギターの弾き語りスタイルのBluesを商業的に録音している話であって、家庭でプライベートに弾き語りをすることは白人も黒人も関係なくあるはずだ。
先日NHKのBSでミシシッピーのコットンフィールドを行く番組があってBluesも出てくるというので見たのだが、そこではかつて子供の頃から綿花畑で働いていたという黒人のお爺ちゃんが出てきて、弾き語りでBluesを披露していた。地元の観光客向けLiveHouseでも弾き語りをしている様子があった。しかしこういった光景は稀なもので、何十人も人が入る飲み屋のような騒がしいところで弾き語りなど黒人はしない。そういうところではダンス音楽も要求されるのでリズムを強調する楽器も必要になり、結局はコンボとかアンサンブル形式になる。これはおそらくレコードが無かった時代からの伝統である。
1950年代に白人は歌としての弾き語りBluesを録音し続けていたのに、黒人の弾き語りBluesはほぼ皆無になってしまったのは、音楽の需要が異なるからだろう。おそらく白人はプライベートに音楽を聴いていたのに対して、黒人の場合は家族・グループなど小集団で音楽を共有するという聴きかたが主であったように思える。(参考『ギターを持った黒人(2)』)言い方を変えると黒人は人が集まってくると音楽が始まるような文化なのである。それは昔からの集団的な労働形態も関係しているだろう。
不思議なことは、黒人のギター弾語りBluesと遜色ないような良質の白人カントリーシンガーのBluesが、Bluesファンからはもうひとつ評価されない点である。レコードから流れる音楽を聞いただけなら、歌っているのが白人か黒人か判別つかないレコードだって結構ある。私は気に入れば白人か黒人か詮索せずに聞いているのだが、時々白人しかもC&Wの人であったことがわかることがある。特にオリジナルが黒人Bluesであるものを白人がやっている場合に、白黒わからないものになる。
実は昔のAMの黒人向けラジオ局でもそういった白黒判別のつかない白人アーチストのレコードはかけていて、しかも黒人の人気を得てしまうこともあった。時々R&Bヒットチャートにも白人が入ることもあった。
未だ謎に包まれた無名の白人カントリーBluesは意外にも残された音楽フロンティアかもしれない。
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