投稿日: Jan 25, 2011 12:11:7 AM
怪しいマーケティングが増えていると思う方へ
企業がソーシャルメディアを活用して…という記事は、日本であれ、本場アメリカであれ、それほどインパクトのある内容にはお目にかかったことはない。一方でマーケティングにソーシャルメディアを…というトーンは強くなっている。そういう願望が底にあると、ソーシャルメディアとマーケティングの関係を良い方向で考えようとするらしく、炎上マーケティングということを言い出す人もいた。グルーポンで「おせち」を買ったらショボかった件で、グルーポンが素早く対応したことは評価できるとして、プラス効果をいう人もいたが、相当ムリクリな考えだ。
炎上マーケティングというのがあるとすると、広告で人々を挑発して賛否両論を起こした後に、上手に落としどころに誘導するノウハウがなければならない。要するに最終的には高く評価されるべき落としどころを備えている必要があって、賛否両論を舵取りする道具としてソーシャルメディアを使うという魂胆だろう。しかし自信のあるよい商品やサービスならば、そんな回りくどい宣伝をする必要はもともとないのではないか。
冒頭の活用事例の中で時々出てくるのが、ソーシャルメディアを介して偶発的に顧客不満足が発覚した場合に、すぐにうまく対応すると、そのことがソーシャルメディアを介して広がって、良い関係ができたというものである。これは一種の事故対策であって、マーケティングというより企業の姿勢の問題になり、そもそも顧客に気配りができているところはソーシャルメディアがあればプラスになり、気配りのないところはリスクが高まるというものだ。企業の広報がソーシャルメディア対策を考えるのはこんなところが出発点になるかもしれないが、顧客への気配りは広報担当者だけではできない。
ましてや顧客への気配りを外部のマーケティングの会社に任せてできるものではなく、これはフィリップコトラーの言うインターナルマーケティングのように、企業の風土とか文化のような身についたものにする必要があり、一朝一夕には結果が出るものではない。しかしソーシャルメディアのような顧客の反応の素早いものがあることは、うまくするとインターナルマーケティングの習熟を早められる時代になったといえる。
ソーシャルメディアは企業の不都合をバレバレにしてしまうので、販促企画という視点で口コミは意図的に作り出すことはできない。そんなことをするとリスクが高くなりすぎるか、その予防を用意周到にするならコストがかかりすぎる。ソーシャルメディアが企業のプラスになっている例はあるのだろうが、それはキャンペーンのようなものではなく、本業の日常の顧客満足が徐々に向上するという性質なので、外から見えにくいのではないか。