投稿日: Nov 08, 2012 1:22:28 AM
落差が大きいと思う方へ
アメリカの大統領選を見ていると、投票装置はタッチパネルになっていて、即座に集計されている。アメリカには時差があるので、アラスカの投票の時にはすでにオバマ勝利は決まっていたようだ。いつも日本の選挙の投票に行って疑問なことがあった。選挙の前には電話でのアンケートがかかってきたりする。それは世論調査の会社とかコールセンターが行っているもので、オペレータはパソコンを前にして電話応対をしているので、それらは即座に集計されているはずである。また開票速報の当確の元となる投票所出口調査のデータも即刻集計できるような仕組みになっているからこそ、開票率0%でも当確が出たりする。今回のアメリカの開票を見ても、最初の段階は元々民主党と共和党の地盤のしっかりしたところからスタートしたので、0%で当確が出ていて、テレビやHuffPostでも開票集計とリアルタイムに近いように棒グラフが表示されていった。だいたい報道番組の進め方もタッチパネルが多く使われている。
つまり民間のIT利用に関しては日本もアメリカも似たレベルだし、おそらく発展途上国でもこのような選挙システムは導入されているだろう。しかし日本の投票所は投票システムが始まった云百年前と完全に同じ姿で、システム的な連動をするようになっていない。これはなぜなのだろうか? 戸籍や住民票が各自治体ごとにシステム化していて、横断的に使えないとか、およそ時代錯誤な業務フローが固定化している。以前にも書いたが千葉のあるところで戸籍用の和文タイプが入手難で困っているという話が未だにあってびっくりしたことがある。eJapanの後退ぶりも凄まじい。官公庁の業務は前世紀のままのところが多く残っているようだ。これが変えられないのは、現場の心理的なものもあろうが、それよりも上の決断だろう。
一般にシステムを切り替えるには初期投資が必要になり、そのコストが出せないという理由で着手しないことがある。しかし従来のコンピュータシステムを運営するよりもパソコンとインターネットを使ったほうが安上がりになるから、民間は冒頭のようなIT利用が盛んになったのである。IT利用で安く便利にできるものを官公庁が実行しないのは税金の無駄使いだというクレームが官公庁の電話窓口にしばしば来るのだが、こういった電話応対はたいてい派遣のパートの人が対応しているので、何を言っても上には伝わらない。聞く耳を持たないということだろう。
これで守られているのが既存のコンピュータ業界などである。こんなことがまかり通るのは住民や納税者の声をシャットダウンできる暗黙の仕組みがあるからで、逆に民間の自由競争で負け続けている古いコンピュータ屋はこういった「安全地帯」に依存する率が高くなっているのではないだろうか。そんな日本のコンピュータ業界が国際的な競争力を持つはずが無い。ベンチャービジネスという零細IT屋にはいろんな業態があるが、日本で弱いのが企業の戦略的なIT化を一緒に開発するところである。つまりBtoB的な発想のITベンチャーがもっと活躍する必要がある。
ジャーナリズムを通じてみるITビジネスはコンシュマー向きのものが多いが、それは大ブレイクをする場合もある一方で人々に見放されるのも急になる。今ではガラケーのアプリがそれにあたる。しかしBtoBは顧客のビジネスが成功裏に進めばやるべき仕事も増えていくので、専門性を大切にする場合は成長できる分野である。実はアメリカのクラウドやデータセンタというのはそういうIT関連業の集まりともいえて、日本人が考えもしなかったようなものがいっぱい開発されているのである。あなたはどう思いますか?