投稿日: Nov 05, 2014 1:18:12 AM
昔から紙加工というのは日本のお家芸のひとつで、折り紙や切紙細工というのが伝統的に行われていた。私の爺さんは昭和の初め頃かに大阪で紙屋をやっていたことがあり、店で奉加帳のようなものは加工していたようだ。それに余技で七夕の飾りつけなどを色紙でいっぱい作っていた。切り紙の飾りは基本は使い捨てなのだろうが、あまりにも見事な紙細工であったので、戦前のものが戦後まで保存されていて、はさみだけでこんなにいろいろな型のものができるなんて凄いなと子供心に思ったものだった。残念なことにそれらの風習は家族に受け継がれていない。
でもこういった伝統はどこかに残っていて、時が来れば復活することもある。子供の頃は雑誌の付録に厚紙を切り抜いてパーツにして組み立てるようなものがよくあった。今でも趣味とか幼児教育では存在するのだろうが、こういったものの応用範囲は広いと思う。知育オモチャなのだろうか、電子回路ブロック(写真)というものがあるが、今ではこれは紙でもできると思う。殆どの電子部品はチップ化したからだ。しかしチップのままでは小さすぎて人手で組み合わせることすら難しくなっているので、紙ベースでブロック化すれば扱いやすくなるからだ。すでに紙細工にLEDをつけて光モノにするというのはきっとどこかでされているだろう。
要するに伝統の技も時代とともに用途を見直すことができれば、どこかに生き残ろうことはできるのだろうと思う。
ビジネスとしての紙加工は、幼児書とか商業印刷用には遊び心をくすぐるモノが中心となり、一方で紙器、伝票とか袋・封筒類など合目的性、機能性、生産性を追い求める分野がある。実際には両者は無関係なわけではなく、前者の面白さを追求する場合でも大量生産が必要ならば、後者の生産性というのを無視するわけにはいかない。
後者であっても使いやすさを考えるならば、説明しなくても使えるようなユーザインタフェースを設計しなければならず、人間工学的な要素を加味することになる。これもエンジニアリングである。
単に人が見て凄いということだけを狙いに紙加工に関するデザインをしていると、芸術性とか手作りの工芸性の方に比重が行ってしまうことがある。だから「感性」で商売する人と、エンジニアリングで商売する人がコラボレーションしなければならないわけで、デザイナ側からエンジニアリングにも目を向けさせようという意図は「デザインのひきだし」といった媒体に感じるが、エンジニアリング側からデザインとかクリエイティブに目を向ける媒体というのはない。そもそもデザインの雑誌はあっても紙製品や紙媒体のエンジニアリングの雑誌というのは殆どないともいえる(紙器関係ではあったのだが)。
それは紙のプロというだけではなく、機械加工のプロでもなければならないので、時代の変化に追随する新たな領域がいつでもつきまとうので、エンジニアリングの雑誌ができないのだろう。
とりわけ従来の紙加工に加えて、紙素材がどのような新たな領域に入れるのかというエンジニアリングの情報が、きわめて不足しているように思える。
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