投稿日: Jul 26, 2012 12:46:28 AM
ロングテールあなどるべからずと思う方へ
7月25日に電子出版再構築研究会「オープンパブリッシングフォーラム」で「出版マーケティングをみなおす」をテーマに、復刊ドットコムの沿革やビジネスを紹介いただいてディスカッションを行った。 日本は世界でも稀に見る出版点数の多い国で、毎日300点も新刊が出ては、1年で7割以上が入手困難になるという特殊事情もあり、絶版や品切れ本を復活させる試みやサービスは以前から行われていた。通販のフェリシモも利用者のアンケートを基に出版社に再版を求めて一定数を買い上げることをやっていたように思う。それは人々の間に読みそびれた本や手放した本への思いがずっと残っているからである。
そうすると、なぜ一定量の需要のある本を出版社が品切れにしてしまうのかが根本的な疑問なのだが、これは過去の本の点数があまりにもありすぎて、その管理に手間を割くことができないのが実情だろう。実際には重版再版の努力をしていないのではなく、印刷会社には数百部単位の増刷依頼がくることもあるのだが、現状以上は手に負えない状況なのだろう。こういった部分を出版社に代わって行うビジネスモデルは、オンデマンド印刷が注目された10年ほど前からいろいろあったのだが、その草分けであり生き残りであるのが復刊ドットコムである。
復刊ビジネスの背景には前述の業界内側の理由があって、マス出版に対するロングテール部分としてニッチな領域は確保されているのだが、どうビジネス化するかが問題で、そのパターンができつつあるのだなということが復刊ドットコムのお話から理解できた。復刊ドットコムにしても当初のターゲットどうりではなく現在のコミック・サブカルで一定のビジネススタイルができたのは、ネットやEC慣れした層の価値観とか要望がしだいに明確になって、その人々とビジネスをする際の[部数×単価]というカタチができたきたということで、この経験は今後の他の層に対する展開にも役立つだろう。
また復刊ドットコムは本来出版社が手におえなかったことをビジネスにするわけだから、ビジネス成否の早めの見極めや、復刊交渉の効率的な仕事の進め方、ネットでのプロモーション、オンライン直販など、出版社の能力以上のノウハウが復刊ドットコムに溜まってきたこともわかる。とりわけ現在で42万人の会員を擁し、そこから復刊のリクエストを得るだけではなく、どのような復刊要望であるのかも集めていて、双方向性のある一種のコミュニティ型のサービスになっているので、そこで見えてくる情報をベースにしたビジネスも考えられる。これはCookpadにおいてもBtoBのサービスがあるようなもので、出版社にマーケティング情報を提供するとか、タイアップ企画をするとか、さらに出版社のアウトソーシングをするような方向の発展が考えられる。
復刊ドットコムはTUTAYAのTポイントが使えるようになったことで会員が増えたという。個人的な勝手な夢をいわせてもらえれば、100万会員にして出版マーケティング事業を育てるとか、さらに1000万会員にしてビッグデータの処理でAmazonに挑むというような、いろいろな展望が考えられると思う。
電子出版再構築研究会 名称:オープン・パブリッシング・フォーラム Ebook2.0 Forumと共同開催