投稿日: Sep 24, 2014 1:39:32 AM
イスラム国ISはイスラムの住民の問題を解決はしていないが、欧米など外野による「事態収拾」を難しくさせた。これは意図されたものかどうかは分からない。おそらく偶発的なものなのだろうと思う。しかしそのことは今回のISによる戦闘が終わっても、引き続きわれらの社会の中で問題となっていくだろう。それはメディアが人々の「模範的な行動指針」を導くものとはならないということである。
昔から戦場には報道機関とかフリーランスのジャーナリストが入っていって、実際のところはどうなっているのかを伝える役割をしていた。それは戦争の当事者が発表する内容は信用できないからである。戦争というのはそもそもの始まりから情報の誇張の塊である。盧溝橋などでっちあげ事件や煽りという情報戦略で戦争の大義が形成されていく。
しかしマスメディアなど情報機関た提供する情報量が少ないとか不確かさとかを補うためにフリーのジャーナリストや民間情報も必要になる。それらを組み合わせて大政翼賛的な「模範的な行動指針」が出来上がっていく。
これがアメリカであっても同じで、20世紀後半のベトナム戦争、湾岸戦争などをみていると大衆メディアを通じて愛国的「模範的な行動指針」は形成されていく。今回のISも彼らなりにそういうことをしているのだが、彼らはイスラム国とは自称しても国の体はなしていないこともあって、大本営発表もYouTubeとかSNSを使わざるを得ない状況になっているのだと思う。
しかし日本を含めて欧米の報道機関はISの内側からの取材はできないので、報道にはそれらISの大本営発表を使わざるを得なくなるが、それでは欧米の報道機関がISの声明を増幅していることになってしまって具合が悪い。
ISがSNSを使うことには2面性がある。IS内部とか支持者に対する伝達と、敵対する欧米に対する伝達の両方がSNSには込められているからだ。これはSNSのような一次情報は古今東西今までのマスコミが担ってきた一つの誘導的な「模範的な行動指針」を目的としたメディアではないということだ。
今マスコミはこれらの情報を自メディアでどう扱ったらよいものか思案していると思う。それはSNSを見ている側は、IS側の投稿画像(1次)とテレビなどのマスコミ報道画像(主に2次)の区別ができないであろうから、手が出しにくいのである。実際のところはアルジャジーラのような中東の報道機関がこう伝えていますというような形でISのSNS画像も引用しているようにみえる。
ISの進撃の背景には、シリアの政府側vs反政府側、イラクの現政権vsサダム残党、アラブ各国の協力関係、などが複雑に絡み合っていて、欧米もどこを応援すればよいのかわからない状態になっているだろう。これは情報伝達においても同様なことがいえる。今までも似たような経験はしていて、アメリカやNATOがどこかを物的な支援しても、それらは結局ISにかっさらわれていって、今ISがtoyotaの新車を連ねて行進しているよな状況が生まれた。これからもどこかを支援しても、その結果がどうなるのか、中東の複雑な関係がある以上は見通すことはできない。この間隙がISの侵攻を可能にしてきたともいえる。
人々のそれなりのリテラシーを想定してSNSを生み出した欧米がSNSの1次情報をどう扱ってよいか答えをもっておらず、欧米マスコミをこれほどまでに悩ますものとは思っていなかった。
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