投稿日: Nov 11, 2014 12:39:15 AM
商業印刷物と呼ばれる分野は、主に販促の範疇に入るわけだが、印刷物が減っていくのとは反対にネットの販促に費用が取られるように変化している。これは紙媒体が不要になるという意味ではなく、生活者がネットメディアに接する時間を増やしたから経費の配分も変わってくるという変化で、テレビなどのマス媒体に関しても同様の変化を蒙っている。
広告代理店は、業界ごとのマーケティングのコツとか、クリエイティブを押えているので、メディアが紙でも電波でもネットでも影響を受けないというスタンスであったのが、少し風向きが変わりつつあると思う。それは経費の配分がブランディングのような広報宣伝よりも、売り上にすぐ反映する販促に比重が置かれるようになって、テレビも新聞も広告が通販だらけになるとか、売り場とか営業の現場が主導するものが優先されるようになっている。
そのために、店ごとに入荷した商品を売り切るにはどうしたらよいか、という視点でのミクロな販促が課題になって、そういうことは広告代理店の出番ではなくなってしまう。広告代理店がタイムセールとかの面倒を見てくれるわけではないからだ。しかし一般に小売業はカツカツの人員で回しているので、店内販促をする余裕はあまりない。よくPOPを上手に作っている店があるが、それはそのために専任スタッフを雇う方針を持った事業体であって、POPのない店にPOPをやれ、というのは無理がある。
そこでネットのメディアとかデジタルサイネージを使って、店ごとの販促をすることがいろいろ考えられてきた。当初は商品ごとのテレビCMなどの動画をサイネージに出すようなものが主流であったが、ネットスーパーとかになると自分でコンテンツを用意しなければならない。これはチラシを小さくしたようなもので、かつての印刷会社が「顧客の囲い込み戦略」とかいって面倒を見る時代は終わって、印刷とは無関係にデータでコンテンツだけを提供する業者が活躍している。
当初クロスメディアは、マスメディアの素材を販促でも使うという傾向があったが、今はマスメディア素材とは関係なく組み立てるようになりつつある。例えばARというのは素材として商品そのものや印刷物や売場そのものなどをマーカーにして、そこから紐づけられたコンテンツもマスメディアに行くわけではなく、むしろ生活者に何らかのエクスペリエンスを与えるものにしようとしている。マンション販売ならはその物件が何階にあるのか、窓はどちらの方向をむいているのか、などによって外の光景は変わるわけだから、その個別の要素を体感してもらおう、という販促企画になる。
こういうコンテンツは広告代理店に丸投げするようなものではなく、マンションなら設計段階で得られるものであったり、建築中の資料であったりするように、社内で発生するものである。つまり「オウン・コンテンツ」なのである。実際問題として商品説明に必要なちょっとした動画コンテンツは社内で用意されるようになってきた。それを配信するメディアとしてARとかサイネージのプラットフォーム・サービスがある、という関係になろう。販促の場合の効果測定はPOSデータとの付け合せが必要になるが、これも社内の基幹システムが使われ、広告代理店に頼むようなものではなくなるだろう。
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