投稿日: Jan 24, 2015 2:21:30 AM
電車の中でも電子書籍(含む漫画)を読む人は珍しくなくなってきた。Webの時代でもオンラインのドキュメントはあったし、青空文庫もWeb以前からあったのだが、やはりページ単位で読み進むという電子書籍風の体裁の方が人に馴染むのかもしれない。PDFというのも定着していて、なかなかそれ以外のフォーマットには移行しにくいのが実情だった。パソコンの画面は横長なのでPDFなどで縦長のページ表示をすると上半分しかデフォルトで見えなかったのが、タブレットでは縦位置で全ページの表示ができて、文字も読めることから、PDFも見直されてきたと思う。
しかしPDFにはWebのような多機能さはないので、文字のリフローが可能なEPUBとか、それにHTML5要素を付け足すことで、電子教科書や電子カタログを発展させようという概念が数年前にできた。だからこの間は主にタブレットを対象にいろいろな電子ドキュメントの実証実験がされてきた。その中で実際の商用サービスに至ったものは非常に少ししかない。そこから考えると電子書籍の一般への普及は大したものであるし、そういう時代になったのならば、ここ何年か鳴かず飛ばずであった電子ドキュメントにも新たなチャンスが巡ってくるともいえる。
なぜ電子ドキュメントが実証実験の域を越えなかったのかを考えると、例えばオーサリング技術は優れていても、課金などの運営がうまくできないとか、情報源をおさえている編集がオンラインで入稿できるようになっていないとか、オンライン利用には著者やプロダクションを口説かなければならないとか、ドキュメント制作の全工程にわたってステークホルダーのハーモナイズができなかったからだ。
Amazonとか楽天のようなオールマイティのハブ機能のあるところでは、制作から流通・課金まで全工程のシステム化が可能で、それなりの成果をだしたのだが、工程が分断されてそれぞれが個別の事業体である場合には一緒に新しいビジネスを起こすシナジーに非常に時間がかかって、実証実験の次には進めなかったことになる。
ここで新たなフェーズに入りつつあると思うのは、ハブ機能のあるところが電子ドキュメントのビジネス化に乗り出そうとしているからである。しかしそれは既存の電子書籍とか電子書店のようなものではなく、今まではB2Bのクローズドなものであったために(実証実験は別として)、出版界や電子書籍界隈の人の目には映らなかったのである。
記事『出版界解体』では、日本の出版物の発行点数8万点と同じくらいの点数の出版物が企業や団体が自費で制作するものとしてあることを書いた。ライターやフリー編集者や印刷屋さんにとってはこれらも重要な仕事であったわけで、このクローズドな分野が電子ドキュメントとして動き出せば、Amazonとか楽天に匹敵するもうひとつの電子出版が誕生することになる。
2015年はそれが目に見えることが起こりそうだ。
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