投稿日: Dec 15, 2010 9:35:16 PM
本当に採りたい人が居ないと感じる方へ
大学生の就職活動が大変だというニュースや、それに関する議論が多い。大学生の質の問題があって、企業側は欲しいだけの人数が集められていないとか、中国人の方がよく勉強しているとか、それは大学が増えすぎたせい、また進学率が高まりすぎたなど、質が薄められたという人もいる。大学進学で理工系へ行きたがらないからこうなったという人もいる。理工系から事務職にはつけても、文系からエンジニアにはなれないので、理工系の方がつぶしが効くともいわれる。しかし意外に議論されていないのは、職種の変化である。以前『大学卒はどこへ行く』で、「卒業後に単純知的労働をあてにして大学進学などすると、職がないという状況は今後も続いていく」ことを書いたが、1980年代のOA化以来の職場におけるIT化で、読み書きできる人間を一定量確保しなければならない職場は時代とともに減っているのである。
業務の中で、人が覚えて人に伝えるとか、人が監視するという部分は、情報のアクセスが容易になるとかシステム化で非常に省力化した。これはATMとかキャッシュレスとかICタグなど目に見えるところにもあるが、情報サービス自体も増え続けるのではなく、自分自身の省力化や業務圧縮をするように進んだ。昔のコンピュータはキーパンチャーが文字入力していたのがほとんど無くなるとか、ソフトウェア要因が足りなくなる!というのもパッケージ化とかサービス化で切り抜けた。こういうITの自己変革能力は、人間のキャリアが20年ももたない状況を作り出している。工場のFA化で使われるロボットの生産をロボットが行っているような具合に、人ではなくコンピュータがコンピュータを使うような状態が通信で増えていて、マッシュアップなどはそういった例である。これでは単純な雇用はIT分野でも減っていく。
日本の企業で大きな利益を出しているのは、一般の人が名も知らない会社で、中国にハイテクの部材を売っているところが多く、先般のノーベル賞ではないが中国が国内で調達できないようなファインケミカルの開発力を持った会社群である。大学生が企業のブランドに惹かれて就職しようとすることが間違いの元で、社会を見て自分が何をしたいのかを考えてこなかったことのツケが今就職難として現れている。自分が何十年か従事しようとする分野に必要な能力を学生の段階で開発しなければならない。イギリスBBCが奨学金を出している話を聞いたが、それを受ける人は夏休みはBBCでインターンシップで働き、研究開発にも携われて、そのまま就職する人もいれば、そこでの成果を掲げて民間企業に行く人もいる。
今の日本の若者が意欲が低くて企業から声がかからない状態を何とかするには、学生の間に実社会に接触して、将来の仕事のきっかけとなる何かをつかみ、自分で能力向上をするしかないだろう。MEDIVERSEキックオフイベントの締めくくりで増井俊之 慶應義塾大学環境情報学部教授は、アイディアは学生でも出せることや「未踏ソフトウェア創造事業」のことを少し話したが、特に若い人を対象にしたメディアビジネスなら積極的に学生を巻き込んだプロジェクトが行いやすい。IT分野は先輩の能力の寿命が短いので、若い人に早く引き継いでもらわなければならない。企業内のIT化や企業内のメディア制作においても学生を巻き込むことが直接・間接に出来るなら、学生と企業の接点は増えるだろう。こういうことを通じて社会や業務を理解した学生を卒業させることが必要だ。