投稿日: Dec 16, 2014 1:24:0 AM
アメリカの黒人は人口の15%くらいなので、1960年頃では3000万人近くいたと思われるが、45回転盤レコードの種類は白人と同じくらい出ていたと思われ、所得の割にはレコードがよく購入されるとか録音・発売されるという傾向はあった。要するに音楽が盛んで、奥行きがあるとか分厚い音楽文化が醸成されていて、ちょっとやそっとでネタ切れは起こさないような、黒人内輪での蓄積が膨大にされていたといえる。引き出しが多いと言ってもよい。
しかし黒人音楽の全容は一気に白人に理解されることは無く、40年ほどかけていろいろな引き出しが順番に開けられていくことになる。Jazzは戦前から白人にも評価されていたが、戦後はロックンロールが白人にも浸透し、1960年以降はR&Bがpopsの一角に進出しTop100Hitsのかなりを占めるようになった。その後Soulになると全地球上に広がっていくことになる。
この黒人のレコードという音楽コンテンツがどの程度のビジネスであったのかを、ごく大雑把に考えてみると次のようになるだろう。横軸は販売数で右に行くほど多い。
以前書いたことがあるが、放送禁止になった歌でも100万枚を売る場合がある。これは音楽の伝達がラジオやテレビといったメディアに依存しておらず、地元の店のライブやジュークボックスでの伝搬によるものも大きいということになる。
一般には10万枚も売れたら、まあまあの稼ぎになるのではないかと思う。数字は根拠はないが、いずれにせよ出される音楽のうち最も多くの楽曲は最初から何万枚も売れないだろう。最初に何千枚かプレスして様子をみてもブレイクしないというのが大方であろうが、それらの中でも10年とかの期間のうちに何度か再プレスをしている例は多く、かなりの楽曲は累計で何万には達しているようにみえる。
1950-60年代の黒人向け45回転盤で現存するのは100分の1から1000分の1になっているはずで、99%~99.9%はこの50年ほどの間に破棄されている。その残ったものを探し出してきて現在のコレクターが売買したり、リマスターしてCDが出たりしている。さすがに近年になって幻の名盤が発見されるという機会は極めて稀になっていて、黒人45回転の世界に関してはすべての引き出しが開けられているともいえるが、それがCDで出ているかといえば、まだその市場は形成されていたい。その市場の先駆的な動きがヨーロッパのクラブ文化であるともいえる。
しかしアメリカにはそいういう50年前の黒人のレコードを引っ張りだして皆で聴こうという風潮は強くはないと思う。それは改めてレコードを聴くまでもなく、そういった音楽がいまだにどこかで継承されているからである。YouTubeでいろんな音楽イベントの映像が上がっているが、アメリカのローカルなイベントでは無名の人がそういう音楽をしているものがよくあり、白人のカントリー&ウエスタンがそうであるように、民謡化しているともいえる。
MustagSallyで検索すると、何百もアップされていて、新旧の対照もできて面白い。
1960s Wilson Picket Live
2014年 今の何処かの誰かのLive
このようにアメリカで受け継がれているものと、ヨーロッパのクラブ文化と、それなりに共通項があることをみると、両者の基盤になる黒人向け45回転盤時代というものを再考察してもよいように思う。
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