投稿日: Oct 25, 2014 1:17:35 AM
何年ぶりか、10年ぶりか、くらいのご無沙汰でパソコンのパッケージソフトの売り場に行くことがあったが、その棚をざっと見て唖然とした。予想はしていたがMicrosoftとAdobe以外ではウイルス対策が多く、それらで売り場の半分くらいを占めていて、残りはフリーウェアとかシェアウェアに毛が生えたくらいの3000円から5000円のパッケージであった。こういうソフトパッケージの専業社があるのかどうかは知らないが、私の知っている会社のパッケージもいろいろあったことから考えて、大抵のソフト開発は受託の仕事の合間にツールをパッケージ化しているように思えた。つまりパッケージが本業というのは流通業者だけなのではないか。
パッケージが激減した一方でオンラインの売り上げはパソコン通信の時代からずっと伸び続けてはきているのだろうが、その売り上げは個人のプログラマを潤すことはできても、企業としてやっていけるほどにはなかなかならないだろう。なぜそのようになったのか?これは人々にはソフトウェアが必要なのではなく、ソフトを使ってできることを求めているからで、それはネット上のサービスとして可能になれば、ソフトを直接インストールするとか扱う必要がなくなるわけだからだ。
昔はメーラーソフトをPCにインストールしてコミュニケーションしていたのが、SNSとかLINEのアプリでコミュニケーションするようなものである。
それでもサービス収入を含めてもIT業界の売り上げが増えたかどうか疑わしい。パッケージの市場がどこかに移るよりも消失した部分が多いと思う。こういう市場の消失が電子書籍でも起ころうとしている。紙の時代に青空文庫はあり得なかったのが、今は古典やアーカイブがネットでタダで見られることは当たり前になった。バチカン収蔵の古書籍・文献もタダでネットに公開されるという。ちょっと前にGoogleが過去の人類の遺産をすべてネットでアクセスできるようにするといっていたのは、次第に現実味を帯びてきたし、Google以外でもその動きは明確になりつつある。
紙の新聞に対して早くから見限っていたヨーロッパは、今度は放送も見限らなければならなくなりつつある。つまり営利的な商業活動というスタイルでマスメディアはやっていけないのではないかということを考え始めている。このように先にどのようなことが起こりそうかを考えたり議論することはよいと思う。そこから次の時代を生きるヒントも見つかるのだろうと思う。
翻って日本は、図書館が悪い、古本屋が悪い、自炊が悪い、YouTubeが悪い、など「下り坂」を誰かのせいにして抜本的な対策を考えないで過ごしてきた。それでは視点を先に向けることができない。
(ちなみに日本の書籍は人口減を考慮に入れると「下り坂」にはなっていないと思う。書籍よりも市場が「下り坂」の業界は山ほどある。むしろ安定している業界であるから変革が難しいのだろう。)
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