投稿日: Nov 02, 2013 1:40:4 AM
中期の展望を考える上で
ネット上のコミュニティを背景に企画・開発・提供・利用・サポートがされる方法はソフトウェア開発のオープンソースが先駆けとなって始まり、今はクラウドソーシングなどビジネスにも影響を与えるようになったことを記事『コンテンツ制作自体が変わる』に書いた。しかし出版物やCD・DVDはデジタルで制作されるようになっても、出来上がるまではアナログの業界・業態のままで作られていて、デジタルコンテンツの革新としては不十分である。
AmazonがブックオンデマンドやKindleなどを手がけても、それらで個別にどれだけ稼ぎ出すのかだけが問題なのではなく、いろいろな出版関連ビジネスが1つのデジタルコンテンツから展開できるようになることで、何が起こるのかということに注目しておくことが必要である。
今となって「Steve Jobs ならこう考えただろう」という発想法を身につけようと思っても手遅れで、彼が存命中に彼と戦う道を発想できなければ対抗できない。Amazonをビジネス上での何らかの脅威とか影響大と思う人は、Amazonの発想法は今つかんでおかなければならないはずだ。しかしAmazonが理解できないことが多いのは、日本の旧来のビジネス習慣が染み付いているからであろう。実際には日本の出版関連も多様化していて書籍流通などはこの20年で大きく変わってきた。その中で敢えて昔から変わらないところを基準にしようとしていたのではAmazonは理解できない。
例えば出版社で新人著者の原稿持込みはオコトワリしていますというところがある。これは忙しい編集者が時間をとって相手をしていられないという考えなのだろう。仕事の効率からすると有名な先生の原稿を確保して本に仕上げれば、あとは取次ぎと書店にまかせればよいということだろうが、それではネット時代の新しい読書環境を何とか広げたいというような方向には一向に進まないだろう。
出版社に原稿を持込みたい著者は、きっと何らかその出版社にリスペクトをもっていて、当然本の読者として過去にたくさん本を買ってくれたお客様でもある。そういう人を邪険に扱っていいのか。編集者が忙しいのなら、OB編集者と契約して対応させることだって可能なはずで、そこで若干コストがかかったとしても出版社のイメージ作りもなるし、新人にいろいろ教える機会にもなるし、少なくとも若い著者の感性がどうなっているかを知るマーケティング上のメリットもあるはずだ。
従来、原稿持込を断っていたのは、99%は著者の意向に沿って紙の出版物にすることができないからだった。しかしKindleなどで自主出版が可能な時代になったので、それは本のテストマーケティングにも使えて、レビューしたい人向けに配布するのに使うことも出来る。そうすると出版社に必要なのは、分野ごとにレビューできる人たちのコミュニティを作ることになるが、日本の一般的な出版社はそのところが経験が少ないので、すぐには対応できない状況だろう。
一方ゲームの会社やラノベ出版社はコアなファンに囲まれていることもあって、すでにレビューコミュニティに近いものがあったり、今後ネットで組織化しやすくなっている。その場合にAmazonのやっていることは良く理解ができるだろう。
コンテンツビジネスの土台はやはりネット上のコミュニティを背景に組みなおすことになるとAmazonも考えていると思う。