投稿日: Mar 31, 2015 12:33:23 AM
ネットでドレスの色が何色に見えるかとか、カラーバーは何本あるかという話題があったが、これらは見る人それぞれの装置によって違いがあるのは当然だ。私はphotoshopをする都合上、デスクトップは昔からEIZOなので、ノートPCの画面でも同じ画像を見て違いを感じることはよくある。アナログテレビの昔からデバイスカラーの差は当たり前だと思うのだが、逆にデジタルテレビのように世の中では色再現がよくなってしまったがために、画面の色に対する信頼度が上がってしまって、個人の見え方の差の問題として採りあげられたのかもしれない。しかしそれに取り組むには表示装置のカラーマネジメントが必要になる。
一方印刷の世界は結構カラーマネジメントが進んでいて、デジタルカメラもカラープリンタもメーカーの違いやデバイスの差で色味が大きくずれることは稀である。(ただしインクジェットプリンタは用紙とのマッチングがあるので、決められた用紙でなければカラーマネジメントが成立しないが…)だからちょっと色に神経を使うようになっていれば、印刷通販でカラー印刷を依頼しても大丈夫なくらいになっている。
近年印刷業界は縮小していったが、生き残っている会社は概してカラーマネジメントのレベルが高く、色再現に安心感を抱かれる会社では印刷機を増設しているくらいである。
過去20年くらいカラーマネジメントは叫ばれていたのだが、印刷関係者でもなかなか理解されなくて、一部の専門家でなければ取り扱えなかったことから考えると、一般のIT利用者が自分でカラーマネジメントをする日が来るとは思えない。また今の安いノートPCで、見る角度によっては色が変わるような液晶ではカラーマネジメントを厳密に行っても意味がない。用紙によって色が変わるインクジェットの使い方でも意味が無い。これらコンシューマ向けのところがカラーマネジメントの残された課題となっている。
インクジェットプリンタが生き残るには、入手できる用紙がインクジェット適性になっている必要がある。これは今の「普通紙」が実際には電子写真用紙であることから考えると、「普通紙」がインクジェット用紙になる日は近いはずだ。すでに電子写真とインクジェット兼用紙と称しているものが多いのだが、その色再現基準というのが工業規格として決まっていない点が不十分である。色がカメレオンな安い液晶も時間とともに駆逐されていくだろう。
つまりカラーマネジメントが示したことは、知識の普及によって問題解決がされていくのではなく、専門分野が担うべき課題であったということである。だから印刷関係者でもカメラやプリンタやディスプレイメーカー並の勉強をするところが生き残っていくのは当然で、逆に機械を買って使うだけの印刷会社ではコンシューマと同列であって、個々に生じる色の問題の解決はできないことになるのだろう。
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