投稿日: Jul 30, 2013 12:18:16 AM
ネットメディアのエコシステム
Web上の情報の殆どがタダであるとはいえ、殆どはそもそも有っても無くてもよいものであるし、だからといって消し去ることもできないのは、どうでもよい情報の1万分の一かもしれないが貴重な情報もあるからである。原発事故のように報道の統制がされているものでも、ネットにはリーク情報が出る(誤情報に埋もれた形ではあるが)ので、これは紙メディアしかなかった時よりはオープンになった面もある。
しかしほって置くとネット上は紙媒体向けに編集されたものに比べると未確認情報が圧倒的多数になる。つまり情報の質は平均としては落ちる。それは個人のblogなどだからではなく、ネットのメディア・ジャーナリズムにも通じることである。以前からQ&Aサイトの質が落ちていることを書いているが、最近はBlogメディアもアルファブロガーとか言われていた人は飽きられて、さらにアマチュアな人が書くものが増えてしまった。
アマチュアでもどんどん人前に出てくることには意義があると思うが、紙の著者やアルファブロガーや初期にQ&Aサイトの面倒をみていたような専門的な人が、次第にネットから身を退き始めているのではないかと思わされることがある。同時に有名文化人をフォローするというのも冷めてきているのではないか?
今まで無料でもネットに情報を提供していたのは何のためだったのか?読書の反応が得られるから?SNSなどで採り上げられて情報が拡散する様などを経験すると、ネットのポテンシャルを感じることがあるが、だからそれが何なのか?今でもあると思うが、毎日たくさん情報をネットに発信して、たくさんのフォロワーを獲得して、紙の本を出版して何万部か売れれば成功、ということをしている著者もおられるが、そのサイクルをずっと継続している人は居ない。大抵は本のプロモーションをしなければならないというモチベーションの高まった時期だけ情報発信に熱がこもっている。
だからこのモデルが新たな出版のエコシステムになることもないだろう。エコシステムという点で考えると、もっと自然体で活動しながら情報の好循環がされるようにならなければならない。広告でいえばネイティブ広告なのかもしれないが、ネイティブな情報発信がメディアの役割をするようなものである。
例えばネットで何らかの専門的CDを売っているところは、CDの解説や評を自分でホームページに書くことがプロモーションになっていて、情報提供に相関して売上が上がるという関係ができる。実際にはAmazonの方が若干安く売っているのかもしれないが、固定ファンならばちょっと割高でも情報性の高いところの方が指示されて、そこで買ってもらえるだろう。
私は学生の頃にレコードの輸入と通販をしていたのだが、その手本というか尊敬していたのは、イギリスの Peter Russell’s Hot record Store の通販だった。私も個人的にはそこから買っていたのだが、通販カタログがすばらしく、次々買う気にさせる濃い内容だった。また梱包は世界一でさまざまなサービスもすばらしかった。
つまりこれらの要件はメディア技術やメディア論以前の話で、まずは顧客に素敵なサービスを提供して、良いビジネスをしようという指向の中で、メディア技術やメディア論が出てくるようにしなければならない。
eBookとか本でいうならば、ちゃんとした書評とリンクした紹介サイトをつくるとか、そこにはオリジナルなコンテンツも提供するとか、サービスとともに評価されるコンテンツが一体となった情報提供をしていかなければならないのではないかと思う。こういうところにライターの仕事も出てくるのではないだろうか。