投稿日: Aug 03, 2015 12:25:53 AM
日本の某大電気メーカーの歴代社長が帳簿上の利益を出すように指示して粉飾をしていたことがニュースになっている。ガバナンスの欠如が会社を狂わせていって破滅になる前に、このことが公にされたのは幸いかもしれない。山一證券が自己破産したことや、銀行の不祥事などを思い出した人は多くいただろう。
帳簿上の操作で守ったものは、任期中の社長の体面だけであろう。つまり社長の体面のために、その会社が本来正すべきことが隠されてしまって、ツケが先送りにされる。それをひきついだ次の社長もまた先送りをするという、砂山の棒倒しとか椅子取りゲームのようなことが始まっていた。
こんなことが起こるのは、社長が責任をもつ任期の範囲が短く、自分の任期中だけ会社が安泰ならそれでいい、というような社長とその子分たちが増えてしまったからで、中長期の会社のビジョンというものが絵空事になってしまったからだろう。会社の事業が順調に行っている間は、社長は誰でもよいようなもので、サラリーマン社長が据えられる時代になってしまうが、経営環境の大きな変化があるとビジョンの修正が必要になり、単なる一定任期のサラリーマン社長ではやり難いことが多かろうと思う。
冒頭の某大電気メーカーは世界に原発を売ろうと政治力も使ってセールスをしているのだが、ドイツのシーメンスは3.11東関東大震災の際の福島原発事故の後で原発ビジネスからの撤退を発表し、フランスの原発関連会社との合弁も解消した。ただシーメンスは蒸気タービンの製造は続けるので事業が完全になくなるわけではないが、核燃料とは手を切る方向を示した。
これはドイツ政府の意向を反映したもので、2022年までに段階的に原発から脱する方針に転じたために、原発の運営、建設、投資には携わっても事業の発展がないからだ。むしろ今後は再生可能エネルギー事業の拡大というところに転換する機会だと考えたのであろう。わたしは新たな火力発電がありえるのか地熱発電のようなものを狙っているのかわからないが、福島の事故から半年の間に、シーメンスが数年の間に発電に関する事業の転換をすることに、社外取締役もステークホルダも早々と承諾してしまったことに驚いた。
創業社長の場合は、ある程度ワンマンというか、社長の個性で事業展開や転換がされるものだが、創業社長のビジョン作成能力に匹敵するものを社員が引き継げないというのが悩みであった。だから後継者の時代には単なるアイディアとか執念ということで創業社長の真似をするのではなく、外部の人でもその目的なら一肌脱ごうと考えるような、ステークホルダーが納得しやすいミッションを掲げることが重要に思える。
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