投稿日: May 13, 2013 1:30:35 AM
デジタルメディアは面白くなれるかと思う方へ
ITの仕掛けとしてメディアを考えることは、マルチメディアの最初の頃からあって、技術先行で始まって「さあどうぞコンテンツを入れてください」というアプローチをしていたが、そのような方法で立ち上がったメディアはない。しかしコンテンツを作る側からすると既存メディアで十分という態度になりがちで、新メディアとコンテンツの間の溝はなかなか埋まらなかった。そしていつも「編集が必要」ということになるのだが、編集経験者を求人するだけで立ち上がるのだろうか?
中には流れ作業で原稿の整理や校正を延々としているという要素はあるのだが、それは誰でもちょっとトレーニングをすると出来るようになる。例えばニュースリリースのようなありふれた内容を扱っている場合にはそれらの作業が中心になるのだろうが、それで競争力のあるメディアはできない。他には無いような内容を盛り込みたくなると、ネタ探し、著者探し、原稿依頼、取材などのような流れ作業ではない要素に比重が移っていく。これらのできる人は編集経験者という肩書きをもっている人でも居なくて、Webサイトを盛り上げる上でもなかなか人材確保は難しい。
このことを一般化してとらえると、クリエーターとの緊張関係をうまくコントロールできるかどうかの資質になる。例えば原稿依頼をする際に、注文が多いと書く人はいなくなってしまうわけで、著者の能力を見計らって注文を考えるということがさいしょにある。さらに著者が注文と異なるものを仕上げてきたときに、どのように軌道修正するか、機嫌を損なわないように書き直しを求めるとか、場合によっては編集で文章に手を入れさせてもらって、しかも著者を怒らせないなど、大変に人間的なやりとりが重要な仕事となる。
大体が原稿締め切りが守られるわけではないので、催促の仕方が重要であるし、何らかの理由で原稿が入らなかったときの対処も出来なければならない。これは著者が挫折したり逃げた場合のリスクを最初から考えていて、そのリスクが高い場合は代替案も同時に進めておかなければならない。こういったやり取りが面倒だからという理由で安全確実なネタや原稿ばかり追いかけるようになると、とたんに面白くなくなるので、メディアの生命線に「編集者」がなるわけである。
これは音楽ではA&R、絵画なら画廊というような人が、クリエーターに働きかけていることとほぼ同じで、そのことはネットのメディアになっても変わらないだろう。しかし伝統的な人脈を持たない分だけ今のところデジタルの世界の方が弱いともいえる。