投稿日: Oct 14, 2015 1:10:20 AM
アメリカの科学博で1997年に14歳のネイザン・ゾナーの研究「我々はどのようにして騙されるのか」が最優秀賞を受賞したことを紹介したblogがある。これは偽科学がどのように人を誘導するのかと言い換えてもよいものだ。内容は、以下のような化学物質であるDHMO(ジハイドロジェンモノオキサイド)を使用禁止にするかどうかを人々に問うものだ。
・水酸と呼ばれ、酸性雨の主成分である。
・温室効果を引き起こす。
・重篤なやけどの原因となりうる。
・地形の侵食を引き起こす。
・多くの材料の腐食を進行させ、さび付かせる。
・電気事故の原因となり、自動車のブレーキの効果を低下させる。
・末期がん患者の悪性腫瘍から検出される。
・その危険性に反して、DHMOは頻繁に用いられている。
・工業用の溶媒、冷却材として用いられる。
・原子力発電所で用いられる。
・発泡スチロールの製造に用いられる。
・防火剤として用いられる。
・各種の残酷な動物実験に用いられる。
・防虫剤の散布に用いられる。洗浄した後も産物はDHMOによる汚染状態のままである。
・各種のジャンクフードや、その他の食品に添加されている。
参加していた50人の大人の43人が使用禁止に賛成し、6人が決断を保留、1人は反対した。反対した人はH2Oであることが分かっていた人だった。
ここに書かれた性質は脈絡なく羅列してあるだけで、ここから論理的にものを考えることは難しい。だから保留にするのが順当なところだが、86%の人は理屈ではなく印象だけで判断をしている。この場合はネガティブな印象を与えるものだけ書き連ねて使用禁止を誘導したのだが、逆も有り得る。広告のテクニックにもつながるだろう。
ネットがトンデモ言説の宝庫であるのは、殆どの人は文章を正確に読み解こうとはしないからだろう。ちょっと考えれば極端な言説というのは見抜けるもので、それはジャーナリズムの役割の一部であると思うが、ネット上は旧来の媒体ほどにもジャーナリズムが機能していない場所であり、議論を積み重ねて集束させようとしても、発散させる力の方が大きくなっているように見える。
紙媒体でもトンデモ本がベストセラーになることはあるが、買って読んだ人も結果としてはアヤシイという印象をもつことが多いと思う。しかしネットでは本を読むというのにかかる一定の時間がないので、落ち着いて振り返って考えるよりも前に人々が反応してしまうのだろう。